YOGEE NEW WAVESインタビュー「過去を愛でる瞬間と、過去を脱ぎ捨てる瞬間はどちらも必要」

ー今作はよりサイケデリックな音像になったと感じました。アレンジをしていく上で、何かインスパイアされた音楽などはありましたか?

角舘:もう、いろんな楽曲を聴きすぎて、それらが頭の中で原型を留めないくらいミックスされているんですよね。だから、何か参考曲みたいなものを具体的に挙げるのが難しいんですよね。でも、去年はDJ KRUSHの『Code 4109』や、マッドリブの『Shades of Blue』を聴いていました。スモーキーな音像を作るトラックメーカーが好きなんですよ。

上野恒星(Ba):俺はミツキの『Be the cowboy』をよく聴いてたな。それと、最も感動したライブは、サマソニの時のカマシ・ワシントン。

粕谷哲司(Dr):俺はサン・ラとか。それ考えるとカオスなバンドですよね(笑)。

角舘:最近の特に洋楽は、1曲の中に様々なジャンルの要素がどんどん混じり合っていて、聴く人の角度によって聴こえ方って全く違うと思うんですよ。それぞれの角度から引っ張ってきたものを、ヨギーの楽曲に落とし込んで、そこでまたミックスしていくから、ますますジャンル分けが不可能になってきてる。例えば僕らって、以前は大瀧詠一さんの影響を多分に感じるとよく言われたんですけど、当時の僕は大瀧さんって一度も聴いたことがなかった。でもきっと、大瀧さんにめちゃくちゃ影響を受けたバンドを僕が聴いて、そこから知らないうちに大瀧さんの遺伝子が受け継がれていたんでしょうね。                                

─今後、ますますそういう傾向は強くなっていくでしょうね。

角舘:それとは別に、あえて分かりやすい引用の仕方をすることで、若い子たちが古い洋楽を聴くきっかけになってくれたらいいなという思いはありました。

─「CAN YOU FEEL IT」のベースラインは、アーチ・ベル&ザ・ドレルズの「Tighten Up」だったりとか。

角舘:そうそう(笑)。他にもいろろ忍ばせているので、ぜひ見つけてみてください。

─以前から思っていたことですが、YOGEE NEW WAVESって常に移動しているイメージがありますよね。

上野:メチャクチャありますね。バンドを動かしているのは、船に乗り込んでいる感覚にすごく近くて。それぞれの役割がありつつ「あっちへ行ってみよう」「こっちに寄り道してみよう」みたいな感じで、力を合わせながらせっせと漕いでいるイメージ(笑)。

─バンドに限らず多くの人たちは、何か一つのスタイルを確立したらそれを維持したくなると思うのですが、常に変化していこうとするモチベーションはどんなところから来ているのでしょう。

角舘:そこはすごくシンプルですね。自分たちが楽しめているかどうか、そこを最も重要視しています。僕らが心から楽しめてないものを、お客さんに聴かせられないじゃないですか。もし、僕らが自分に嘘をつきながら「こういうのがいいんでしょ?」って提示していたら、それはただのモンキービジネスだし音楽をやる意味がない。

僕らは心から音楽が大好きで、それ故に自分たちで作って演奏して、ただ楽しんでいるだけというか。そう言うと「プロ意識がないんじゃない?」と思われがちなのですが、そういうことじゃないんですよ。もちろん、誰かに聞かせることは大前提なんですけど、音楽は常に変化しているからこそ面白いと思うんです。僕らは「変化」することに対して、1ミリの躊躇もない。2曲目「Summer of Love」で“未知との遭遇”と歌っているように、僕らの人生は「未知との遭遇」の連続だなと思いますし、それを100パーセント楽しんでいるんです。



─メンバーの中で、進みたい方向が違ったりすることはないんですか?

上野:そういうときももちろんあるけど、でもやっぱり自然と共有している空気感みたいなものもあったりするので、そこで調整がなされてますね。時にはぶつかりながら、どっちを向いているのかを確認し合うことをずっと続けている感じ。

粕谷:「最近はどんな音楽が好き?」とか「昨日こういう映画を観たよ」みたいな話は結構みんなで共有し合っていて。そういう会話の中からなんとなく「こっちへ進んでいくのかな」みたいなムードを感じているのかも。もっと抽象的な「気分」の面でも、今は「アッパーでいこうぜ!」という感じなのか、「ちょっとチルな気分だよね」という感じなのか、大体わかるし。

角舘:なんか、その人の人となりや話し方や声のトーンを聴けば、どんな音楽が好きなのかは正直わかるじゃないですか。メンバーならなおさらだし、「あ、こいつ何か発見したな」と思うとやっぱりその通りだし。そういうお互いのちょっとした変化にも敏感でいるから、例えば誰かが僕の思っているのとは違う方向を見ているなと思ったら、僕にも一度その世界を見せて欲しいと思うんです。「意見が違うならやめちまえよ」とは全然思わない。そいつの音楽性も、人間性も否定するつもりはなくて。そもそも、人間性に感銘を受けてバンドに誘っているわけですからね。

─「CAN YOU FEEL IT」は、“よければ踊って 過去を踏みつけてよ”というラインがとても印象的でした。過去も未来もない、今この瞬間をダンスしながら進んでいく“刹那の連続”こそが、人生なんだというメッセージも受け取れて。

角舘:そうですね。過去の蓄積によって現在はあるのだけど、過去に目を向け過ぎると未来が見えなくなる。かといって過去をないがしろにすれば未来はない。でも未来をないがしろにして過去ばかり見ていると、今に止まったままになってしまう。本当に難しい問題。だから、過去を愛でる瞬間と、過去を脱ぎ捨てる瞬間はどちらも必要だと思う。ただ、この「CAN YOU FEEL IT」という曲では、いつの時代でも若者は音楽に夢中で仕方なくて、そこにはダンスというものがあり、過去を踏みつけてでも今を楽しまなきゃいけないという、今の曲なんですよね。

きっと、スピーカーの前で一心不乱に踊る場面というのは、きっとどの時代にもあって。なんていうか、そことのつながりをも感じながら作ったんですよね。そんなこと言うとスピっているみたいですけど(笑)。

─“一心不乱に踊る”というのは、無意味で刹那的だからこそ重要な気がします。幸福度の低い日本人こそ、もっと踊ったほうがいいのにと個人的には最近思っていますね(笑)。

角舘:ああ、でもそれは一つあると思うな。ダンスって瞑想に近いかもしれないですよね。トランス状態を作り出すというか。過去からも、未来からも切り離されているからこそ、何処へでもいけるというか。江ノ島オッパーラ
のスピーカーのど真ん中で踊っていると、気づいたら10年前にタイムスリップして、同じ服を着た奴が俺と同じ動きでダンスしてたら、どれだけ素敵だろうな、と。もし会えたら超マブダチになれるだろうなあ(笑)。



『BLUEHARLEM』
YOGEE NEW WAVES
Colourful Records
発売中

YOGEE NEW WAVES
角舘健悟(Vo, Gt)、上野恒星(Ba)、粕谷哲司(Dr)、竹村郁哉(Gt)。2013年に活動開始。2018年にはアジア3カ国(台湾、香港、タイ)を含めた全12公演のツアーを敢行。野外フェスにも多数出演し、同年11月からは全国8都市でのワンマンツアー「CAN YOU FEEL IT TOUR」を開催。2019年3月20日には3rdアルバム『BLUEHARLEM』をリリースし、同アルバムを提げた全国ツアーの開催も決定している
http://yogeenewwaves.tokyo/

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE