―ありがとうございます。アルバムの話に戻りますが……平成が終わるじゃないですか?チバさん的にはどうですか?
チバ:別に。そういえば、元号って今もう日本だけなんだってね。ってことは、みんな西暦で数えてるの?
―普通はそうですね。北朝鮮など一部の国は元号を使っているはずですが。
チバ。:そうなんだ。元号って俺たち日本人には馴染みがいいんじゃないの?
―そうなのかもしれません。で、平成ってことで言うと、先日観た芝居の受け売りなんですが、平成の時代で売れた小説は、SFではなく、推理小説なんだそうです。どんなにストーリーが複雑でも必ず最後に犯人がわかる推理小説を、答えがないSF小説よりも、人々は好んだと。それと理想を謳ったユートピア小説よりも、現実を体現したようなディストピア小説が売れたらしいんです。でも、僕は『VIVIAN KILLERS』の中で時々顔を出すユートピア感に救われたんです。
チバ:バンドの話もそうだけど、俺は時代に沿ってないんだよね(笑)。ダメだよ、それじゃ。
―でも、そういう理想や希望を謳っているところに救われたし、そういうポジティヴな部分ってロックンロールの大事な要素だと思うんです。
チバ:でも、それは人によるんじゃないかな。思いっきり現実的なことを見せつけるロックンロールもあると思うし。さっき言ってたユートピアみたいなものを歌ったり演奏したりするロックンロールもあると思うから。それは別に限定する必要はないよ。
―そうだとは思います。でも、チバさんの何気なく書くポジティヴな言葉に救われる人、多いと思うんです。だって世の中的にはニュースをつければ悲惨なニュースしか出てこないし……。
チバ:。みんなそうやって、今の時代はダメとかって言うじゃない? でも、ずっとダメなんだって。人類は、縄文時代よりも前からダメなの。だから、あの頃は良かったなんてまったく思わないから。そこはね、本当そうだと思うよ。ずっとその時代その時代に、その時その時で嫌なことはあるわけよ。それを今更……今更っていうか「今こんなだから」とか言ってもさ、そんなの昔っからあるんだから。縄文時代だっていざこざはあったわけでしょ。きっと戦争もしてただろうし。そんなのね、ずっとあるの。当たり前の話なの。その中でもいいこともあるわけじゃない。生きていてさ、嫌なことばっかりなわけじゃないじゃない。それを俺は歌ったんだと思うよ。歌っているんだと思うよ、最近は。
―そういう言葉を書く時、チバさんはどんなことを思っているんですか? 例えば『VIVIAN KILLERS』収録曲「青空」の“お前の未来は きっと青空だって”は?
チバ:「青空」に関してはちょっと思うところがあって。それは個人的なことなんだけど、それが世界に対して言ってるようなイメージになってももちろんいいと思うんだけどね。
―「青空」の“お前”は特定の人がいたんですね。
チバ:とっかかりとしてはそうだね。
―「FLOWER」という曲には“君が思うほど この世界は それほど腐ってはない”って出てきます。
チバ:うん。……と思ったから。そう思ってるから。
―それは何か具体的な出来事があってそう思ったんですか?
チバ:なんかふとした時に……。なんかさぁ、思う時あるでしょ?
―あります。「 THIRSTY BLUE HEAVEN」の“肯定しよう この世界を”は?
チバ:まずはそこから始めないと、っていう感じの感覚はちょっと俺にもあって。大概さ、否定から始まるじゃない、ロックとかパンクとかって。だと思うんだけど。それこそ嫌だなと思ってることがあるとして、まずはそれを「なるほどね。そういうことなんだね」ってことを理解することから始めようって。その上で否定すればいいっていうことだと思うんだよね。鼻っからNOって言わないように、できるだけ今はしようとしてて(笑)。
―それはどんな嫌な奴にどんな嫌なことを言われても?
チバ:嫌な奴はもう俺とことん嫌うからね(笑)。
―肯定してないじゃないですか(笑)!
チバ:してないね(笑)。
―肯定から始まってないじゃないですか(笑)!
チバ:そうだね。まずいね(笑)。
―矛盾してますよ。
チバ:そういうもんだよ。