我が道を進むThe Birthdayチバユウスケ「単純だよ、俺の言ってることなんて」

―でも確かにパンクやロックは抗いや否定から入りますよね。

チバ:もちろん俺たちもそういうところからバンドやったり、ギター弾いたりとかが始まった。そこに憧れたりとか、いいなって思って始めた。その精神は忘れてないけど、まあ肯定するのもいいんじゃないかなっていうことだね。

―そう思わせることが最近あったんですか?

チバ:いや、別に。

―日々の心構えとして?

チバ:そうだね。例えば、タクシーを止めて、〇〇までって言うじゃん。で、「すいません、このへん来たばっかりで道わからないんですけど」って言われたらさ、それを肯定しなきゃいけないわけよ。そう言われたら「ここで新宿通りに出てね、そこ行ったら左に曲がってもらって」とか説明するとか、そういうのも大事だなと(笑)。そうじゃない? それはもうしょうがないからさ。「わかんないだったら運転するなよ、タクシー」って言えないじゃん。そいつにだって生活があるわけで。

―それは本当にそう思います。みんな一生懸命生きているわけですもんね。

チバ:だからそれを肯定しようって言ってるんだよ、俺は。たぶん。

―逆にチバさんが嫌いな奴ってどんな奴ですか?

チバ:嘘つく奴。まあ、俺も嘘つきだけどね(笑)。

―ダメじゃないですか(笑)。

チバ:仲間とか、そういうところで嘘つく奴は嫌いだね。

(互いにビールをくびぐび呑み、2本目を空ける)

ビール、もう1本呑む?

―はい。「FLOWER」の歌詞にはジョン・レノンが出てきますが、ジョン・レノンは結構聴いてたんですか?

チバ:そうでもないんだよね。でも最初に聴いたいわゆるロック・アルバムっていうかバンドのアルバムは、うちの実家にあった『レット・イット・ビー』なんだよね。それをガキの頃、毎日毎日「これかけて、これかけて」ってオカンに言ってたらしいんだ。

―『レット・イト・ビー』の何が気に入ったんですかね?

チバ:わかんないんだよな。昔の木のSANSUIのデカイ家具調のステレオで聴いてた。高校くらいまでずっとそのステレオでレコードを聴いてたね。今ね、そのステレオは仏壇置場になってる。

―そのステレオ、まだ音は鳴るんですか?

チバ:鳴らない鳴らない。もう木が腐ってて傾いてるし。その上に仏壇置いてあるから、仏壇も傾いてる(笑)。

―(笑)。「FLOWER」で何故ジョン・レノンを引っ張り出してきたんですか?

チバ:ジョン・レノンが生きてたらなんて言うかなって思ったっていうのもあるんだけど。

―それは何に対してですか?

チバ:さっき言ってたような世間一般じゃないけど、社会情勢とか。っていうのもあったんだけど、ただ単に語呂がいいなと思った。っていうのもある。仮歌の時から“ジョン・レノンを〜”って歌ってたんだよね。

―じゃあ仮で入れたジョン・レノンという言葉に引っ張られて歌詞全体が出来た部分もあるんですか?

チバ:それはないかな。あっ、わかんない。あるかな? なんかそういうのをインタビューする人ってみんな聞くけど、俺にとってはどうでもいいんだよ。そのきっかけなんてどうでもよくて。出来たもの……レコーディングし終わって、全部歌詞も入れて、出来上がったのがすべて。それのとっかかりみたいな部分は、関係ないんだよな、俺には。

―だからみんな、僕も含めて、さっきの推理小説症候群なのかもしれないですよね。答えが欲しい。答えがないと落ち着かない

チバ:答えはだから、出来上がったこの曲だし、このアルバムなわけよ。それ以外に答えはない。

―答えという話でいうと、シングルでもリリースされた「THE ANSWER」という曲がありますが、“問い”はなんだったんですか? チバさんは何を問うて生きてきて、「THE ANSWER」を書いたのか?

チバ:そんな深い意味はないよ。

―でも人は生きている間、何かを問うてないですか?

チバ:そんなに考えなくていいと思うけどな。まぁ、答えは……ないね。

―答えがないっていうことはやっぱり何かを問うてる気がするんです。

チバ:例えば「THE ANSWER」に虹が出てくるけど、あん時の虹はきれいだったなぁ……それを思い返して、なんであの時虹がきれいに見えたんだろうなとかさ。そういうことなんじゃないのかな。単純だよ、俺の言ってることなんて。

―「THE ANSWER」にはエゴン・シーレも出てきますが、これも深い意味はない?

チバ:深い意味って?

―エゴン・シーレってヒトラーと同時代の画家なので……。

チバ:そうなんだ。でも、そういう意味とか全然ない。友達の家にエゴン・シーレがあったんだよ。じゃねぇかなと思う(笑)。

―(笑)。ちなみに、絵を観に行ったりするんですか?

チバ:めったに行かないな。あっと思った時は行ったりするけど。よっぽどのことがないと行かないよね。

―レコードは買ってます?

チバ:全然買わなくなっちゃった。持ってるレコードで事足りるんだよ。

―「DISKO」という曲には“いつかのディスコで あの45 心臓を貫かれてからさ”ってありますが……。

チバ:45って書いてないよ。いや、書いたな(笑)。

―(笑)。っていうかチバさんディスコに行ってたんだ!っていう(笑)。

チバ:高校の時、行ってたな。ナンパしに。

―新宿とかですか?

チバ:ううん。地元。

―地元どこでしたっけ?

チバ:藤沢。

―藤沢にディスコあったんですか?

チバ:あったんだよ(笑)。当時ワム!とか流れてた(笑)

―(笑)。ディスコに行ってたのも意外ですが、「THIRSTY BLUE HEAVEN」という曲は“アリスクーパー 血ヘド吐いて”という歌詞から始まりますが、チバさんがアリス・クーパーを聴いていたのも意外でした。

チバ:それがさ、俺あんま知らないんだよね、アリス・クーパー(笑)。

―やはり(笑)。アリス・クーパーってKISSとかそっち系ですからね。

チバ:そうだよね。前にさ、アリス・クーパーのライブを映像で見たことがあって。で、見たらさ、ギターとベースがいるんだけど、そいつらが弾いてないの。後ろにトラがいて、その人たちが弾いてるの。格好だけなの。すっげーなと思って。なんかマンションみたいなステージを組んだけど、弾いてない。すげー! 弾いてねぇんだ!と思って。それをアリス・クーパーはやってたんだなと思って。でも、曲とか知らないんだよね。

―アルバム『Killer』とか聴かなかったですか?

チバ:全然聴かない。有名な曲あるじゃん。ベスト盤に1曲目に絶対入ってるやつ。でも、曲名が出てこない。聴いたら思い出すかも。

―なんで急にアリス・クーパーを歌詞に出したんですか?

チバ:知らないよ、そんなもん。

―自分の歌詞なんだから責任持ってくださいよ(笑)。

チバ:それは知らないよ。思ったんだから仕方ない。

―たいして知らないのにアリス・クーパーを?

チバ:たいしてじゃなくて、ほとんど知らない(笑)。

―語呂が良かったんですか?

チバ:そうだね。そうかもね。

―「DIABLO」で出てくる“軽く風が吹いた さぁワイルドシングを歌おう”の「ワイルドシング」は、チバさんの中ではジミヘンの「ワイルドシング」ですか?

チバ:いやいや、ヴァン・ヘイレンでしょ。最初に聴いたのはヴァン・ヘイレンだからね。絶対にトロッグスじゃないね。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE