DV男性への銃規制『女性に対する暴力防止法』改正に対し、全米ライフル協会が圧力

保守政治活動協議会(CPAC)でスピーチする全米ライフル協会のオリヴァー・ノース会長(ゲイロード・ナショナル・リゾート・アンド・コンベンション・センター、メリーランド州ナショナルハーバー) REX/Shutterstock

DV男性には銃を持たせてはいけない。乱暴や危険行為を働く男性への銃規制を行おうとする『女性に対する暴力防止法(VAWA)』の改正案に圧力をかける全米ライフル協会は、反対に女性たちに銃を持たせようとしている。

全米ライフル協会(NRA)は、ストーカーやドメスティック・バイオレンス(DV)の被害から女性たちを守るため、議員たちへ圧力をかけようと構えている。銃規制に反対する同ロビイスト団体は2019年3月末、「『女性に対する暴力防止法(VAWA)』の改正案に票を投じようとしている議員の評価を下げる」と表明した。1994年に最初に可決された同法だが、女性を傷つけたり脅迫したりする男性から銃を押収する権限を法執行当局に与える条項を追加する改正案が、2019年の議会に上がっている。

NRAのスポークスマン、ジェニファー・ベイカーがナショナル・ジャーナルに語ったところによると、乱暴や危険行為を働く男性による銃の暴力から女性を守ることを意図した“レッドフラッグ”条項は、銃所有に関する個人の権利を侵害するものであり受け入れ難いという。

「銃規制に賛成する一部の人々がDV問題の深刻さを軽視し、政治的課題を進展させるための道具として銃規制を利用しようと考えているのは、残念なことだ」とベイカーは述べた。さらに、NRAはDVに反対の立場だが、自己防衛の目的で女性に銃を持たせて扱い方を訓練するため、DV対策として銃を積極的に導入していきたい、としている。(ローリングストーン誌はNRAにコメントを求めたが即答されなかった。)

VAWA改正案の否決を求めるNRAの主張は、同改正案に反対する共和党議員の立場を正当化する助けとなるだろう。しかし同時に、女性有権者を確保すべきか、それとも怖い銃規制反対者からのA評価を維持すべきかの選択を迫られている共和党穏健派にとっては予期せぬ出来事で、立場が危うくなる可能性もある。どちらを選択するかは、彼らにとって最初の関門となるだろう。

ナンシー・ペロシ下院議長は、改正案決議についてTwitterにて露骨に表現した。「議員は決断を迫られている:ストーカーやDV被害を受けている人を守るべきか、それともストーカーやDVで有罪判決を受けた者も銃を持てるようにすべきか? #VAWA」

DV加害者から銃を取り上げるべきだという主張は、説得力がある。加害者側が銃を所有していた場合、DV被害者の女性が殺害される確率は5倍に高まる。さらにDVに銃が使用された場合、被害者が死に至る可能性は12倍になる。VAWA改正案のレッドフラッグ条項のような法は、人の命を救う。DV加害者からの銃の押収を可能とした法を採用する州では、身近なパートナーに殺害される確率が7%低くなっている。

「家庭に銃があると、DVにより殺害される確率が極端に高まる」と、クリス・マーフィー上院議員(民主党、コネチカット州)はローリングストーン誌に語った。「“銃を買えば自分は安全だ”というNRAの主張は、ただの神話にすぎない。全くの誤りだ。家庭に銃があることで、自分の命が救われるどころか、殺害される可能性の方が高まるのだ。」

Translated by Smokva Tokyo

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