アリアナ・グランデ、ポップカルチャーからの引用をちりばめた最新ツアーレポ

グランデの出番の前に、2組のオープニングアクトが場を盛り上げた。ポップデュオSocial Houseと、フィフス・ハーモニーのノーマニだ。ノーマニを起用したのは賢い選択だ。彼女にとっては今回が初のソロツアー。グループを離れてソロとして成功するにはもってこいのスタートだ。もっとも、単独でのパフォーマンスに関しては未熟な点もあるが、自信たっぷりの立ち居振る舞いで多彩な才能を披露した。

ほどなく、グランデの本公演の舞台セットが登場。月を思わせる2つの大きな球体。ひとつは天井から飛び出し、もうひとつはステージの背景のど真ん中に鎮座している。傾斜のついたランウェイが、オーケストラピットをぐるりと取り囲む。流れるようなラインのシンプルなセットは目障りであるどころか、ツアーの宇宙的なビジュアルを見事に表現し、彼女の衣装と照明にもマッチしていた。

コンサートはアルバム『スウィートナー』と同じ形で幕を開けた。アカペラの「レインドロップス(アン・エンジェル・クライド)」がアリーナにこだまし、何千人ものファンが黄色い声をあげる。舞台裏でグランデがフォー・シーズンズの短いカバーを歌う。すると、メインステージからひな壇がせり出し、「ゴッド・イズ・ア・ウーマン」のイントロに合わせて主役が登場。MTVビデオ・ミュージック・アワードで見せた「最後の晩餐」にちなんだ振り付けを、今度は深紅のレオタード姿で、同じく真っ赤な照明を浴びながら披露した。ここで彼女が得意技を繰り出す。いともやすやすと、のびやかに響く裏声。歌い終わったとたん、会場に震動が走った。


Photo by Kevin Mazur/Getty Images for Ariana Grande

深紅の照明が濃度を増す中、彼女は『thank u, next』からの2曲を披露した。ギターが鳴り響く「bad idea」とイン・シンクをサンプリングした「Break Up With Your Girlfriend, I’m Bored」。グランデは遊び心のあるメッセージ性の強いダンスを交えて、危険な悪女的一面をのぞかせた。

あっという間に、この日最初の衣装チェンジと舞台転換。だがほどなく、若かりし頃のグランデが2003年の映画『ブルース・オールマイティ』のワンシーンを真似るビデオが流れた。おそらく彼女の母親がビデオカメラで撮影したものだろう。幼い頃からすでにカリスマ性を発揮していたグランデの愛らしい姿を見せるため、というよりも、これ自体がひとつのショウとして成り立っていた。彼女が再び舞台に登場。舞台セットと衣装はぐんとソフトでフェミニンになった。グランデの衣装は、ピンクのフリフリのセットアップ。球体もパステル調に色彩を変え、『スウィートナー』の代表曲「R.E.M.」へなだれ込んだ。

お次はまたもや、ポップカルチャーからの引用。映画『ファースト・ワイフ・クラブ』でゴールディ・ホーン演じる人物が、「私にも感情はあるのよ! 私は女優よ! 私だって感情はあるの!」と叫ぶシーンが投影されると、『デンジャラス・ウーマン』のハウスポップ・ソング「ビー・オールライト」や(途中でお決まりのデスドロップあり)、華々しい「サクセスフル」など、グランデの輝かしいヒット曲が次から次へと披露された。もちろん、現在チャートNo.1の「7 rings」も。この時、ステージ上にはピンクの車が登場した。

Translated by Akiko Kato

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