アリアナ・グランデ、ポップカルチャーからの引用をちりばめた最新ツアーレポ

アリアナ・グランデ「スウィートナー・ワールドツアー」初日の様子。(Photo by Kevin Mazur/Getty Images for Ariana Grande)

2019年3月18日、NY・オールバニで開催されたアリアナ・グランデの「スウィートナー・ワールドツアー」初日のレポートをお届けする。

ポップ街道を上り詰めるには、どんなにヒット曲があっても、一目でスターだとわかるファッション性がないとそれなりで終わってしまう。オールバニで迎えたアリアナ・グランデの「スウィートナー・ワールドツアー」の初日。彼女がこの点をしっかり押さえているのは明白だった。いまだかつて、これほど多くのポニーテール姿が大集合した光景にお目にかかったことがない。スウェードのニーハイブーツや、猫耳付きのカチューシャ、オーバーサイズのセーターが品切れ状態になったのも初めてだ。結局のところ、これがアリアナ・グランデのコンサートなのだ。ほかにどんな格好をして行けというのか?

昨今、確固たる美意識を持ち、ファンがこぞって真似をするような若手スターは少なくなった。だがグランデは何年もかけて、自分の見せ方に磨きをかけてきた。そしてついに2019年、世界は彼女に追いついたようだ。あるいは、彼女と何度かコラボレーションしたこともある友人のニッキー・ミナージュが3年前に「サイド・トゥ・サイド」で予言したように、「アリアナがポップ界を動かしたのよ」。

今ほど、どこもかしこもグランデ三昧、という状態はない。オールバニーのショウが始まる数時間前、彼女のシングル「7 rings」がビルボード・シングルチャートでNo.1に返り咲いた。「ラジオをつけたら、きっと彼女の音楽が流れてるわよ」。UBERの運転手がこういった。確かにその通り。数秒もしないうちに、上昇志向の罠を歌ったグランデのヒットソングがスピーカーから流れてきた。

これぞスター。最近2枚のアルバムを世に送り出したばかりだが、1枚目と2枚目のインターバルは5カ月。2枚目の『thank u, next』は、彼女にとってキャリア最大のターニング・ポイントともなった。デビュー間もない頃の彼女は、当時のポップの流れに身を任せながら自分らしい声とサウンドを模索していたが、いまでは時代のほうが彼女に身を任せるようになった。

今回のツアーは彼女のウィニングランであると同時に、存在の証明でもある。前回のワールドツアーでは悲劇が暗い影を落とした。イングランドのマンチェスター公演は爆弾自爆テロの標的にされ、9月には元恋人で長年の友人だったマック・ミラーが薬物の過剰摂取でこの世を去った。グランデが今度はツアーをやらないと言い出しても、ファンはおそらく納得しただろう。だが彼女はそうしなかった。このことからも、彼女がこのショウに欠ける意気込みがよくわかる。

Translated by Akiko Kato

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