ストリーミング黄金時代、音楽レーベルの同一化現象とは?

2018年、シカゴのネイビー・ピアのコンサートに出演するマシュメロ。(Photo by Rmv/Shutterstock)

音楽業界は、長らく多様性をモットーとしてきた。ヒップホップ、ロック、カントリー、R&B、クラシック、インディーズ、エレクトロ、さらにその下に何百万ものサブジャンルが存在し、無限のごとき広がりを見せている。

かつてはその選択肢の多さが、大手音楽レーベルにとって各々のカラーになっていた。しかし近年、各社とも業績アップをはかるべく、お互いのコアビジネスを侵食しつつある。その背景にあるのが「音楽業界のNetflix」を目指す音楽ストリーミング会社の存在だ。彼らはインディーズのアーティストに投資し、従来のレコード会社の枠組みにはまらない独自のコンテンツを生み出そうとしている。

Spotifyは昨年、インディーズのアーティストと直接ライセンス契約を結ぶという手に打って出た。アーティストにレーベルと同程度の金額を前金として払い、彼らがレコード会社と契約を結ばなくてもいいように取りはからったのだ。

その背景には、経済的に切迫した問題があった。Spotifyは現在、純利益のおよそ52パーセントをレーベル側に支払っているが、レーベル側がアーティストに払うのはこのほんの一部だけ。Spotifyはアーティストと直接ライセンス契約を結ぶことで、純利益の50パーセントをアーティストに支払い、わずかな差額を手元に残すことができる。アーティストとしても、懐に入る額はずっと多くなる。

Spotifyのこの施策は、ストリーミングサービス最大の供給元、大手レコード会社のご機嫌を損ねることになりかねない。だがSpotifyの競合相手の何社かは、もうずいぶん前からアーティストとの直接契約を進めている。ただし、アメリカの音楽業界ではなく、他の国々での話だが。

Saavn(現在はJioSaavnへ名称変更)は長らくインドの新人アーティスト向けに「アーティスト第一主義」のプラットフォームを運営し、つい最近ではマシュメロとボリウッドの作曲家Pritamの共演に一役買った。中東最大の音楽ストリーミング会社Anghami(有料会員数は100万人以上)も同じように、マシュメロと地元の有名スターAmr Diabのコラボレーションを実現させた(ザ・ウィークエンドのマネージャー、トニー・サル氏もAnghamiのベンチャー事業に一枚かんでいる)。

最近ニューヨーク株式市場に進出を果たした中国のストリーミング大手テンセント・ミュージック・エンターテインメント(TME)もまた、巨額の資金をつぎ込んで地元アーティストと直接契約を進めている。あまりにも社内の音楽制作部門につぎ込んだかためか、TMEの最新の四半期決算では「コンテンツ費」が前期よりも62.5パーセントも増えていた。

さらに、SpotifyとSoundCloudはレコード会社のもうひとつの牙城、音楽流通を崩しにかかっている。両社が提供するサービスにより、アーティストが自作の楽曲を直接アップロードできる上、競合他社にアップロードすることもできる(AppleMusicやTIDALなど)。

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