美貌と資質のおかげ? NYの富豪たちを手玉に取った「ソーホーの詐欺師」

ニューヨーク州高位裁判所の公判中、休廷後に法廷へ戻るアナ・ソロキン被告。(Photo by Richard Drew/AP/REX/Shutterstock)

アナ・デルヴィー、本名アナ・ソロキン。またの名を「ソーホーの詐欺師」。自称ドイツの「ご令嬢」は、ホテルや飲食店で何十万ドル相当の詐欺を働いた罪に問われている。この裁判で判明した驚きの事実の一つは、本来は大富豪たちの社交場であるところに、彼女がいとも簡単に出入りできたという点だ。

富裕層や有名人御用達のクラウド型チャータージェット予約アプリBladeも、例外ではなかった。8日、Blade社のキャスリーン・マコーマック元CFOは証言台に立ち、デルヴィー被告がネブラスカ州オマハまでのチャーター機のフライトを予約した際、3万5000ドルを超える代金の前払いを要求せずに予約を承認したと証言した。その主な理由は、同社のCEOが彼女と「知り合い」で、彼女の資産状況を保証したという。

マコーマック氏の証言によれば、デルヴィーはニュージャージー州モリスタウンからネブラスカ州オマハマデノフライトを予約(以前伝えられていたところでは、バークシャー・ハサウェイ社の年次総会に出席するためのフライトだった)。往復の料金は総額3万5390ドル(約390万円)だった。

通常Bladeの利用者は、チャーター機の予約には先に代金を払うことになっている。だがマコーマック氏の証言によれば、Blade社は利用履歴のある顧客に対しては、後払いを認めることがあったという。「正直に申し上げますと、過去にもそのようにスルーしたことがありましたが、皆さんきちんとお支払いくださいました」と彼女は証言した。被告はそれまでBladeを利用したことはなかったが、「弊社のCEO(ロブ・ワイゼンタール)が一時彼女とお付き合いがありまして、社交界の方々を通じて知り合ったものですから、お支払いも問題ないと思い、予約をお取りいたしました」というのがマコーマック氏の証言だ(ワイゼンタール氏はこの裁判の証人リストには記載されていない)。

予約日の翌月になってもデルヴィー被告からの支払いがなかったため、マコーマック氏が対応に当たった。法廷に提出された一連のメールの中で、マコーマック氏は被告に対し代金の支払いを請求。一方被告はこれに対し、現在精算手続きの最中だとか、「Gmailのアカウントがロックされてしまった」などと弁明した。ある時点からワイゼンタール氏が介入し、法的手段に訴えると通告。最終的に2017年8月、訴訟手続きが取られた。

ローリングストーン誌に宛てた声明の中で、Blade社はデルヴィー被告の搭乗前に、自社の銀行とドイツ銀行から支払いの確約を口頭で受け取っていたと述べている。同社が6月下旬にドイツ銀行から受け取った電信送金は偽装であることが判明した。

デルヴィー被告の弁護人を務めるトッド・スポデック氏はローリングストーン誌とのインタビューで、被告に前払いを要求しなかったBlade社の落ち度であると指摘した。

スポデック氏はまた、Blade社は後になって再三デルヴィー被告に支払いを迫ったかもしれないが、裕福で権力のあるジェットセッターだという話を鵜呑みにして、彼女を「タダ乗りさせた」ことには変わりないと主張した。「彼らは彼女がドイツのご令嬢だと信じた。彼女がトレンドセッターで、Instagramに投稿してくれるだろうと思った。だから彼女を搭乗させたわけです」(マコーマック氏は自らの証言で、Blade社はいわゆる「インフルエンサー」を無料で搭乗させたことはなく、そのような行為を禁じる厳格な社内規定を設けていると証言した)。

Translated by Akiko Kato

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