炎上したコンドームの広告、「同意」をめぐる議論はなぜなくならない?

性行為への「同意」に関する議論に首を突っ込んでマーケティング戦略に利用した企業はTulipan社が初めてではない。広告代理店Ogilvy Sao Paolo社は昨年Schweppes社のために、女性がクラブでどれだけ頻繁に身体を撫でまわされているかをテーマにした「スマートドレス」という広告を制作した。広告の中で、はじめのうちは女性蔑視的な意見だった男性陣が、恐怖の面持ちで動画を見ている。これまで女性たちが再三訴えてきたこと、つまりハラスメントという問題がそこら中に蔓延していることをはっきりデータで見せつけられ、驚いている。

またIT業界では、心優しき起業家たちが性的暴行を防ぐウェアラブル装置を開発して、新たな市場を開拓しようとする傾向もみられる。たとえば2017年、MITの卒業生の一人がBluetooth対応ステッカーを開発した。無理やり服を脱がそうとすると、服を着ている本人が同意の上であることを指示しないかぎり、自動的に5つの緊急連絡先に電話がかかる仕組みになっている。性行為の前に双方が使用することを想定した同意承認アプリなるものもあるが、Tulipan社の広告同様、性的暴行防止派の批判を浴びている。同意が会話の流れの中で行われるものであることを認識していない、というのが彼らの主張だ。ベッドの中で何がアリで何がなしか、その線引きは話し合いと交渉を繰り返すうちに決まるものだし、そうあるべきだ。「契約書を交わすのとはわけが違うのよ」。Feministingというブログでレイナ・ガットゥーソはこう書いている。「同意というのは、ベッドルームから教室の中、活動の場に至るまで、より平等的な社会規範を作ろうという包括的なプロセスなのよ」

Tulipan社側は広告が会話の糸口を作ったとして、世間の厳しい反応にご満悦なようだ。「BBDO社では、今回のキャンペーンで起きたことに大変満足しています」。広告に対する痛烈な批判について尋ねられたカンピーナス氏はこう答え、広告キャンペーンが失敗に終わったのは「Tulipan社がローカルのブランドで、潤沢な予算がない」ためだと語った。

「この広告の目的は啓発です。性行為の同意に関する議論を社会に促すことです」とカンピーナス氏。「事実、こうして議論の新たな側面が持ち上がり(例えば、同意が途中で撤回される場合があるなど)、それが広告に反映されることで、この問題が再び議論されてゆくのです」。だが本当に問題なのは、性行為の同意をめぐる議論がそもそもなぜ必要なのか、ということだ。

Translated by Akiko Kato

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