キース・リチャーズが語る、ソロ活動を通して実感したミック・ジャガーのありがたみ

リイシューされたばかりの1988年のThe X-Pensive Winosの過小評価作品『トーク・イズ・チープ/Talk is Cheap』をリチャーズが掘り下げる(Paul Natkin/WireImage)

キース・リチャーズがリイシューされたばかりの1988年のソロLP『トーク・イズ・チープ/Talk is Cheap』を掘り下げつつ、このアルバムを作ったことでミック・ジャガーのありがたみを実感した理由をローリングストーン誌に語ってくれた。

1986年当時、ローリング・ストーンズの未来に暗雲が垂れこめていた。新作『ダーティ・ワーク』でのツアーを行う代わりに、ミック・ジャガーはソロ活動を始める。そのため、キース・リチャーズはずっとやってみたかった新たな挑戦をすることにした。つまり自分のバンドを組むことだ。そして、仲間を集めて組んだバンドをX-Pensive Winosと命名し、ケベックのスタジオに入り、メンフィス・ソウル、レゲエ、アーリーロックを融合させた作品『トーク・イズ・チープ/Talk is Cheap』を完成した。

「ストーンズのプレッシャーは感じなかったね」とリチャーズ。「かなり自由だったぜ」 『トーク・イズ・チープ』は発売30周年記念としてリイシューされた。リイシュー盤にはボーナストラックも加えられている。これはWinosがチャック・ベリーのピアニスト、ジョニー・ジョンソンと共演している楽曲で、リチャードの言葉を借りると「マジックだ。驚異的にロックンロールしているブギー曲」だ。このアルバムを作ったことで、ストーンズが再び集まったときにリチャーズはバンドを違う目で見られるようになったと言う。「ミックの視点をもっとありがたいと思えるようになった。特にステージでね。2つの最高のバンドに参加できたことは非常に素晴らしいことさ」 このインタビューでキースは不遇の名作『トーク・イズ・チープ』について深く掘り下げてくれた。

―『トーク・イズ・チープ』はあなたが手がけた作品の中で最も好きな一枚です。これはあなたのファンが共通して感じていることなのですが、気づいたことはありますか?

ああ、ある。何度も言われているよ。最高のバンド2つに参加できたなんて素晴らしいよ。それにWinosの連中とは今でも仲良しだ。スティーヴ(・ジョーダン、ドラム)とは頻繁に会っているし、一緒に仕事することも多い。俺たちはいつも後方で仕事しているし、それがどんな作品になるのかよくわかっていないけど、そうやって仕事するおかげで腕が鈍らないのさ。

―Winos以前にソロ・アルバムを作ったことは一度もなかったのですが、ストーンズの外で活動することは怖かったのですか?

そうだったのかもしれないって感じだな。だって俺らしくなかったから。常にストーンズ、ストーンズ、ストーンズって、それだけしかやっていなかった。最高のバンドがそこにいるわけだから。でも、あのときの状況が俺に再び仕事をする機会を与えてくれたし、もう一つの最高のバンドを見つけるチャンスもくれた。二重に祝福されている気分だよ。それにWinosは今でも俺の中で生き続けている。あのバンドが恋しいんだ、実は。メンバーとはよく会っている。ワディ(・ワクテル、ギター)は前のソロ・アルバム『Crosseyed Heart/クロスアイド・ハート』に参加しているし、基本的には全曲とも必ずどこかにWinosがいるって状態だったね。

―アンソニー・デカーティスがライナーノーツで指摘していたのですが、ソロ作品を作るときに有名な友人たちだけでオールスター・アルバムを作ることも可能だったのに、それとは異なるアプローチを取りましたよね。

スティーヴと俺はこういう類いの製作でかなり密接に仕事する。俺たちのアプローチは「誰がベストだ? ここで聞こえるサウンドって誰のだ? 誰を呼べばいい?」って具合だ。基本的にこの感覚で作業するわけだよ。友だちを何人も登場させるやり方じゃなくてね。ただ、偶然登場した友人もけっこういる。例えばブロンディ・チャップリン。あと、ワディもそう。アイヴァン(・ネヴィル、ピアノ)もそう。一方で一度も会ったことのない人もいた。スプーナー・オールドハムとか。彼とはずっと一緒にやってみたかったんだ。そんなふうに、作っている音楽を完成させるのに俺たちが一番だと思うミュージシャンと作業しただけだよ。

Translated by Miki Nakayama

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