BLACKPINK、コーチェラに降臨 その歴史的瞬間を現地ルポ

グローバル&ジェンダーレスなファンを前に、満を持してバンド・セットを披露


うだるような暑さも和らぎはじめたフェス当日の18:30ごろ(BLACKPINKの出番は20:00)、メインの屋外ステージ「COACHELLA STAGE」でケイシー・マスグレイヴスの包容力たっぷりな歌声を堪能した後、筆者は裏のエラ・マイもロザリアも諦めて早々と移動し、BLACKPINKのひとつ前に出演したジェイデン・スミスのライブ途中から「SAHARA」で待機することにした。テスラの高級車を天井に吊り下げ、一生懸命スワッグなラップを繰り広げるジェイデンの姿は微笑ましくもあったが、VIPエリアでは出番直前のROSÉとJENNIEもぴょんぴょん飛び跳ねながらエンジョイしていたようだ。

転換のタイミングに乗じてステージ上手の2列目あたりを確保すると、ドラムセットが見えて思わずガッツポーズ。件のアジア・ツアーでもバンコクやジャカルタなど一部の都市でバンド・セットがお披露目されていたが、BLACKPINKのバックを務めたのは事務所の兄貴分=BIGBANGのワールドツアーにも参加したThe Band Sixという、アフリカ系アメリカ人を中心とした凄腕集団だ。バンマスでキーボード奏者のギル・スミス IIは、これまでにエミネム、クリス・ブラウン、レディー・ガガ、ブリトニー・スピアーズ、リル・ウェインといったトップ・アーティストのツアーやアワードで演奏した経験があり、EDM〜トラップ以降のシーンで「生音回帰」がトレンドとなりつつあることをYG(というかヤン・ヒョンソク社長)が見越していたのだとしたら、その嗅覚の鋭さには心底恐れ入る。

(Photo by Natt Lim/Getty Images for Coachella)
Photo by Natt Lim/Getty Images for Coachella

半円形にせり出した巨大なステージの前には、コーチェラのマーチャンダイズ・ストアでも売っていた公式グッズのピコピコハンマーを光らせたBLINK(BLACKPINKファンの愛称)が大挙しており、韓国語や英語はもちろん、スペイン語、イタリア語、フランス語まで飛び交う現場のグローバル&ジェンダーレスな客層は壮観。最前列を陣取ったニコルというLA在住の女性ファンは、「日本旅行の後にフェリーで釜山に渡って、ソウルでBLACKPINKを見たことがあるの。でも、バンド・バージョンは私も初めて見るから超ヤバいよ!」と興奮した様子で筆者に話してくれた。かくいう筆者も5年ぶりにコーチェラ参加を決意したわけだが、BLACKPINKには人生を狂わせる魔力があるようで、『Vulture』にこの日のレポートを寄稿したジャーナリストのイヴ・バーロウ氏は、「私はもはやBLINKのひとりです」と告白していた。

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Photo by Rich Fury/Getty Images for Coachella

定刻の20:00を少し過ぎて場内が暗転すると、波打つようにド派手&高解像度なLEDスクリーンにBLACKPINKの4人のアー写と名前が次々と表示され、怒号のごとき歓声と共に「JISOO!」「LISA!」「ROSÉ!」「JENNIE!」の掛け声が響き渡る。名刺代わりの「Kill This Love」でぶちかますだろうという予想は見事に外れ、ライブは定番の「DDU-DU DDU-DU」でスタート。メイン・ヴォーカルのJISOOとROSÉは黒系のドレス、ラッパーのLISAとJENNIEは白系のドレスという衣装のコントラストも印象的だったが、生バンドの繰り出す重低音がズンズンと身体を揺らしてきて、昨年の大阪公演とは別物のグルーヴが生まれていく。

Rolling Stone Japan 編集部

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