シーア、ディプロら集結、スーパーグループ「LSD」が体現するポップスの10年史

写真左からシーア、ラビリンス、ディプロ(Courtesy of SONY MUSIC)


2010年代にポップスに起こった変化としてしばしば言及されるのはアトランタ流のトラップの国際化だろう。ディケイが極端に誇張され、ベースラインとリズムを一手に担うようになった808のキックに、グルーヴに緩急をつけるハイハットやスネアのロール。いまやあらゆるポップスにこうした要素が浸透しているのは周知の通り。しかし、同じくらい重要なのは、2010年ごろから急速に巨大産業化したEDMがポップスにもたらした構造的変化だ。わかりやすいのは、日本語でいうサビに着目すること。キャッチーなメロディと印象的な歌詞からなる、ヴァースの対概念としてのコーラス。あるいはより短い、キャッチフレーズ的な文句の反復によるフック。これらを経て、サウンドのダイナミックな変化がもたらす快楽へと主眼をうつしたEDM的なドロップが、2010年代のポップミュージックを特徴づけるサビの形式だ。

こうしたEDMの流れを汲んだ形式をポップスのフィールドに巧みに注入してきた功労者のひとりがディプロであり、このアルバムは彼がここ10年ほどやってきたことを、シーアやラビリンスといった才能と共に改めてプレゼンテーションしていると言っていい。アシッドジャズあがりの味のあるシンガーから、壮大さを湛えたポップセンスを持ち味とする堂々たるシンガーソングライターに転回していまの地位を築いたシーアにとっても、それは同様だろう。ラビリンスがそこに加えるプロダクションの捻りが、こうしたキャリアの重みをふわりと相対化している、といった構図が浮かぶ。

このアルバムが屈指の名盤というほどの評価を得られるかはちょっと保留したいが、英語圏のポップミュージックの現在を詰め込んだ充実の一作であることは間違いない。ダンスミュージックやヒップホップのボキャブラリーが、ポップのフィールドにいかに取り込まれてきたかを示す範例であり、同時に3人の才覚がぶつかりあう特異で濃厚な一作でもある――「スーパーユニットが放つポップソング集」としての軽やかさの奥には、このディケイドの歴史が詰まっている。







LSD(ラビリンス、シーア、ディプロ)

『LABRINTH, SIA & DIPLO PRESENT. . . LSD』
発売中
2,200円+税  SICP-6095
初回仕様限定ステッカーシート封入
ボーナス・トラック収録予定
再生・購入リンク:
https://SonyMusicJapan.lnk.to/LSDAlbumJP

海外公式サイト:
http://www.droppinglsd.com

日本公式サイト:
http://www.sonymusic.co.jp/lsd

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