RADWIMPSインタビュー「野田、桑原、武田が語るバンドの歩みと現在地」


「洋次郎の中で描いている世界をどうやって具現化するか」

ーまさに今作『ANTI ANTI GENERATION』は、「ギター、ベース、ドラム、ヴォーカル」のロックサウンドと、ヒップホップの手法やビートミュージックのサウンドの融合が、かなり新鮮かつ刺激的な内容となっていて。そうやって音の作り方が変わってきたなかでも、RADWIMPSとしては「ロックバンド」という名称で呼ばれることに対してこだわりや美学があると言えますか?

野田:あると思いますね。やっぱり自分は「ロックバンドなんだ」っていう。いろんな音楽が多様化していて、トラックベースの音楽――ビートミュージック、いわゆるクラブミュージックやヒップホップがものすごく身近なところきていて、もしかしたらバンドが一番身近じゃないのかもなって思うくらいですけど。バンドって、一番フットワークが重いんですよ。たとえばイベントがあったときに、「とりあえずDJがいればできる」とか「飛び入りで参加できる」ということではないので。でも、だからこそ、バンドはわざわざ観に行く価値があるものだなっていうふうにしたいし。僕はいまだにロックバンドがかっこいいと正直思っているので、一番かっこいいところに居続けるために、どういう音楽を鳴らそうかなという意識がありますね。

ービートミュージックを取り入れようとしたときに、もっとクールな、エモーショナルや体温をあまり入れない音作りを選ぶこともできたと思うんですね。でも今回のアルバムは、まったくそうはなっていなくて。

野田:そうですね。やっぱり有機的な肉体感がバンドの持ち味だと思うし。同じようにステージに乗ったときに負ける気がしないというか。ヒップホップだったり、DJでターンテーブルを回してたりというのも、それぞれのよさはもちろんあるんですけど、エネルギーの量としてはまだまだ負ける気がしないし、プライドもあるんだろうなと思います。うちらは十何年かけて一つの音を作り続けてきていて、ひとりじゃなく4人で今までずっと作ってきたから。今は5人で音を鳴らしていて、後ろを向いたらドラマーが2人(森瑞希、刄田綴色)いて、横を向いたらこの2人がいるなかで、音を出したときの無敵感みたいなものは、ステージに乗って同列に比べられたとしても負ける気がしないんですよね。

武田:やっぱりライブをやっているときって、すごく特別な時間で。レコーディング・スタジオで弾いているときとは全然違う。5人がガッと向かっているあの空気感が、やっぱりバンドなんだなって。そのフィジカル感と熱量は、今のところバンドが一番なんじゃないかなって思うんですよね。

ー3人のバンド感や有機的な肉体感を音源にも詰め込むために、レコーディングはどうだったのかも聞かせてください。具体的に曲作りはどうやって進めていったんですか?

野田:大きく2パターンにわかれていて。データ上で2人にアレンジしてもらって、俺がそれを聴いて手直しして渡すというやりとりで最後まで構築していった曲もあれば、アレンジを途中までデータでやりとりして、「この方向でいけるね」と決まった段階でスタジオに入ってせーのでレコーディングするというやり方と。後半に録っていた曲は、後者のやり方ですね。「そっけない」「泣き出しそうだよ feat.あいみょん」「TIE TONGUE feat.Miyachi, Tabu Zombie」「tazuna」「HOCUSPOCUS」……あ、半分くらいはそうか。

ー最初に野田さんがデモを渡すときって、どこまで形になっているんですか?

野田:このアルバムでは、歌詞とフル尺の曲ができていることが多かったかな。


Photo by OGATA for Rolling Stone Japan

ーある程度打ち込みもされた状態で、ということですか?

野田:そうですね。してるところも結構あります。ほぼできてる曲とかもあります。

武田:あるね。

野田:「あと、ここを足してよ」って言うときもあるし。でも、弾き語りの状態で渡すときもある。本当に様々ですね。

ーそれを2人に渡して、アレンジが戻ってきたときに、「うわ、こんなふうに戻ってきたのか」という驚きがあった曲って、何かありますか?

野田:また最近作っている曲ではそういうのがあったんですけど、このアルバムではほとんどヴィジョンが見えた状態で渡しているので。どちらかというと要望をしてるよね。

武田:そうだね。洋次郎の中で描いている世界をどうやって具現化するかということが多かったですね。

ーその具現化方法がわからない、ってことはないんですか?

武田:いやいっぱいありますよ(笑)。

桑原:しょっちゅうだね。

野田:大概「違う」って、1回目はなる。

武田:それを受けて、桑原と「うーん……」って(笑)。

野田:昔はスタジオの中でそれを行っていたので、本当にギスギスしてきたりしていて。目の前で「考えて」みたいな瞬発力を俺は欲していたので、一向にできなかったりすると、ただ待つだけの何時間とかがあって。みんなが本当に閉鎖的で窮屈な気持ちになっていくことがよくあったんですよね。それもあって、ある程度までデータでやりとりしようってなって。「いざ鳴らすぞ」という状態になってからレコーディングをするのは、精神衛生上、ものすごくいいんですよ。これは培ってきた業だよね。

武田:そうだね。

桑原:うん、なんとかかんとか続けてきたなかでね。

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