RADWIMPS 野田洋次郎が見てきたポップカルチャーの原風景


ハリウッド映画から日本映画へ

ー音楽以外のカルチャーについても聞きたいんですけど、洋次郎くんが自分のルーツだと思う映画はありますか?


野田:『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。これはダントツですね。最初は日本で観たのかな? アメリカで観たのかな? ちょっと忘れちゃったんだけど、公開された年と映画の舞台が1985年で、俺の生まれ年なんですよ。そういうのもあってワクワクしたなぁ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はいつ観ても面白い映画ですね。それこそ俺が好きなアメリカ感が詰まってるかも。アメリカ的な無敵感というか。

ーその洋次郎くんが好きなアメリカ感、無敵感についてもうちょっと詳しく聞きたいですね。

野田:なんて言ったらいいかな。アメリカって上だけを目指して伸び続けていく、その幻想の中にいる国のような気がしていて。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にある近未来感とか、過去にも戻ったりするその自由な発想もアメリカを象徴するような無敵感がある気がするんですね。今振り返ればね。デロリアンが飛んじゃう感じとか、ホバーボードに乗ったりとかもそう。その発想の奇想天外さと、ストーリーに夢中にさせるあの威力こそハリウッドって感じ。ボックスセットも持ってるから今でもたまに観ますね。

ー映画のジャンルで言うと洋次郎くんはSFが好きなんですか?

野田:いや、本来はそっち寄りじゃないんですけど、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は別格です。アメリカにいたときはけっこういろんな映画を観てましたね。(シルベスター・)スタローンとかシュワちゃん(シュワルツェネッガー)、マコーレー・カルキンが出てるような作品とか。

ーハリウッドの黄金期だったし。

野田:そうなんですよ。なので、アメリカにいたときはかなり映画館に行ってました。仲のいい家族同士で出かけるってなるとアメリカは映画館かボウリングだから。あと、ローラースケート場ね(笑)。ほとんどその3つのどれかになるので。友達の誕生日のときもそう。俺はそのなかでも映画館は好きでしたね。映画を観ながらちょっとずつ英語を学んでた気がするし。もちろん日本語の字幕はないから、映画の内容を理解したいと思って英語を自然と学んだという感じ。

ーもちろん、当時の洋次郎少年はまさか大人になって自分が映画の主演(『トイレのピエタ』)を務めるとは思ってもみなかっただろうし(笑)。

野田:ほんとですね(笑)。

ーちなみに日本映画で印象深い作品は何かありますか?

野田:いっぱいありますよ。18、19歳の頃、一人暮らしするようになったくらいかな? 一時期日本映画をバーッと観まくっていて。TSUTAYAに行って常に3、4本レンタルして観るということを日常的にやっていて。それから不思議とプライベートで日本のいろんな映画監督と知り合いになっていったんですけど──岩井(俊二)さんとか行定(勲)さんとか、最近だと豊田(利晃)さんとか、大根(仁)さんとか。役者の人たちよりも先に監督と仲よくなることが多くて。そういう人たちが監督する映画がやっぱり好きで。「トラディショナルな日本映画ってどういうものだろう?」って思いながらいろんな作品を観ましたね。それは俺にとってすごくいい時間でした。


Photo by OGATA

ー日本映画の叙情的な表現性に惹かれるものがあった?


野田:惹かれましたね。それこそ日本映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とは全く違う惹かれ方をして(笑)。

ー真逆だからね(笑)。

野田:「日本映画だな」っていう空気感がすごく好きになりました。そのなかでもあえて一本挙げるとすれば、矢崎仁司さんが90年代初めに監督した『三月のライオン』は自分の中で第2のエポックメイキングな映画でしたね。映像作家の島田大介さんに教えてもらったんですけど。ストーリーの進み方がスローで、それがまた素晴らしいんですよ。メジャーな作品ではないし、低予算映画なんだけど、すさまじい威力を持っている作品だと思います。俺は自分が好きな人とは友達になりやすくて、矢崎さんにも『三月のライオン』を観た数年後に知り合っていまだに会ったりします。

ー『トイレのピエタ』で役者デビューにして主演を務めるという決意ができたのは周りのそういうコミュニティがあったからこそなんですかね?

野田:でも、不思議なのは『トイレのピエタ』の監督の松永(大司)さんは全く面識のない状態で声をかけてくれたんですよ。それがまた面白いなって。

ーでも、いつかは芝居をする機会があるかもしれないとは思ってた?

野田:いや、全然想像もしてなかったです。だから松永さんがほんとにすごいなと思った。だってリスクしかないでしょ(笑)。

ーでもライブを観たりMVを観たりする中で、「この人は芝居ができる人だ」ってわかるんじゃないですかね。

野田:あ、それは言われました。「映像を観たりしていてこの人はできると思ったんだよね」って。だから、俺の新しい扉を松永さんは開けてくれたんだよね。ほんとに感謝してます。

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