ダニエル役の俳優が語る、80年代人気映画『ベスト・キッド』の知られざる秘話

ーあなたが80年代、どれだけ凄い有名人だったのかを若い世代に伝えるのは難しいんですが、実際にはどんな体験でしたか?

あの時はすべてが圧倒的だった。片足をハリウッドに突っ込んで、もう片方は別世界にいる生活。当時はロングアイランドの郊外に住んでいたから、地元から出た唯一のスターっていう感じですごく注目されていた。だから土曜日にショッピングモールに行く気分にはとてもなれなかったね。一番大変だったのは、ロバート・デニーロとバート・ヤングと3人でブロードウェイに行った時だ。『ベスト・キッド2』公開直後の頃で、僕らはロングエーカー劇場にいて、映画が上映されていた映画館から1本通りを隔てたところにあったんだけど、外に出たらまるで……シェイ・スタジアムのビートルズ状態とは言わないまでも、クレイジーだったよ。

ーあなたの『ベスト・キッド』の最初のオーディション映像を見たんですが、自然な感じが最高でした。癪(しゃく)に障る奴だと思った人もいたようですが。

たぶん、それは脚本家のロバート(・マーク・ケイメン)だね。癪に障る奴というのは正しくないな。ちょっとスカした奴ってことだろう。

ーあの当時、ご自身では自分の才能に自信がありましたか?

ああ。自信に満ち溢れていたんじゃないかな。その自信がどこから来たのかはさっぱりわからないけど。

ー『アウトサイダー』(1983年)に出演した時も自信がありましたか?

自信があったし、あの役がやりたかった。本読みでも、ほかの役のセリフはやりたくなかった。どうしてもあの役がやりたかったんだよ。でフランシス・フォード・コッポラ監督は全員にいろんな役のセリフをやらせたがった。それで僕は言ったんだ、「僕はこの役しかやりたくありません」って。よくもまあそんな度胸があったもんだよ。コッポラ監督が何者かはよく知っていたし、部屋に同席していたメンツもよく知っていた。たぶん今でも同じことを言うと思う。それが僕の性格なんだ。僕は原作を読んだ時、12歳だったから、『アウトサイダー』に通じるものを感じた。映画を撮影するなら僕が出るべきだ、あの役は僕じゃないとだめだと思った。そういうことはめったに起こるものじゃない。一生に一度あるかないかだ。

僕には、まあ今もそうだけど、少し反抗的で生意気なところがある。それがラルーソーに受け継がれて、あの役を面白くさせているんだと思う。心の平穏とかバランスとか、ミヤギ哲学のすべてを習得していながら、悪党に小突かれるとたちまち子どもに戻ってしまう――それが見ていて面白いんだ。

ー最初に『ベスト・キッド』の脚本をもらった時の第一印象を覚えていますか?

タイトルが好きじゃなかった(The Karate Kid:『ベスト・キッド』の原題)。みんなタイトルを気に入っていなかった。ずっと変更しようって言っていたよ。

ー最有力候補のタイトルは何だったんですか?

「The Moment of Truth(真実の瞬間)」。結局エンドクレジットの曲のタイトルになったけどね。フランスとか、武道がまだ人気じゃなかった国ではそっちのタイトルで公開されたよ。The Moment of Truthはどうもダサくて、記憶に残らないタイトルだな。でも『ベスト・キッド(The Karate Kid)』に関しては、ジェリー・ワイントローブがこう言っていた。「わかるかい、これは最悪のタイトルだから最高なんだ」 それで僕は「そうだね、でも万が一これがヒットしたら、僕は一生ずっとこのタイトルを背負っていかなきゃいけなくなるね」って言った。結果はご覧の通りさ。



ー脚本そのものはいかがでしたか?

あの当時はありがちなストーリーだなと思っていた。ミヤギ役には、半分冗談だけど、最初は三船敏郎をブッキングしようとしていたんだ。でも彼は英語が喋れなかったからね。 パット・モリタが演じた人間版ヨーダは完璧だった。スタッフは最初、パット・モリタには気乗りしていなかったんだ。ジェリー・ワイントローブとスタジオ側がダメ出ししてね。するとジョン・アヴィルドセン監督が「このテープを見るべきだ」って。それがパットと僕の初めての本読みの映像だった。いまならYouTubeでも見られるよ。アヴィルドセン監督が編集でつなぎ合わせたのが公開されている。彼にとっても、僕にとっても初めての本読みだった。あの映像で一番面白い点は、部屋の中には僕とジョン・アヴィルドセン監督しかいなかったということ。彼は大きなビデオカメラを持ってて、他の人々は彼のアパートの廊下で並んで待機していた。一人ずつ、監督に呼ばれて部屋に入っていくんだ。僕もその映像を見とき、自分が監督の話を聞きながら少しちょっと緊張しているのがわかった――妻もよく言うんだ、「あなた、ずっと鼻を触ってるわよ」って。緊張してたんだね。だけどセリフを読み始めたら、ラルーソーになりきっていた。

Translated by Akiko Kato

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