浅野忠信率いるSODA!を吉田豪が直撃「バンドの運気が上昇している」

一そのPEACE PILLは、難解な音楽性だったわけですけど。

浅野:でも、最初はパンクだったんですよ。それがデビューアルバムでオルタナじゃないけど、そういうサウンドになるんですよね。やっぱりロックが好きでしたし、新しいことやってるバンドがいるなかで、自分たちもそういうところに目を向けたかった。PEACE PILLはパンクサウンドじゃないから、違和感を覚えた人もいたと思うんですけど、いち早くそこから抜けたかったというか。

一新しいアルバムが出るたび、不思議なことやってるなーと確認する感じでした。

浅野:今もやりたいんですけど、メンバーが宮崎にいるんで(笑)。

一そこから考えたら、SODA!は本当にポップだと思いますよ。すごくわかりやすい、地上波でもやれる音楽をやってるっていう。

浅野:実際、『スッキリ!』にも出ましたし。僕の家って、加藤(浩次)さんのご自宅の向かいにあるマンションで。6階に住んでるから。加藤さんの家が見下ろせるんです。「あ、ハイヤーが迎えに来てる!」「奥さん美人だな〜」とか(笑)。



一素朴な疑問なんですけど、バンドで成功したいっていう気持ちはどれくらいあるんですか?

浅野:いやー、成功したいですね。SODA!で1stアルバム(2014年作『抱きしめたい!』)を出して、ライブをやったことで、今までにない感触を得たというか。僕らの音楽を「楽しい」という人がいて、お客さんともピュアで気持ちいいやり取りができたんですよ。だから、これがもっと広がればいいなって思ったんですね。

一その可能性が見えてきた。

浅野:PEACE PILLをやってた頃とかは、「俳優」っていう手段は使わなかった。できるだけ別物と考えてほしかったんです。でも、SODA!においてはその手段を大いに使おうと。イチイチ切り離すのもウソになると思ってたし、だからこそ『スッキリ!』にも出たんですけど。

一最近も俳優仲間が集まる対バンイベントに、SODA!で出演されたんですよね?

浅野:そうなんですよ。もともとは窪塚洋介くんと映画『沈黙-サイレンス-』で一緒になったときに、「俳優で音楽やってる人がたくさんいるから、俳優だけのフェスがあったら面白いよね」と話していて。そしたら、中村獅童さんがいち早く「ACTOR’S NIGHT」っていうイベントを立ち上げて。「浅野くん、またやるから来てよ~」と誘ってくれて、(今年3月開催の)「ACTOR’S NIGHT 2019」に出させてもらいました。そんなふうに、われわれ俳優の力をいい方向に使って、音楽をもっと広げていきたいというか。普段の俳優業とは違った面白さを共有できたらいいですよね。

一結局、SODA!は今まで浅野さんがやってたバンドとどうして違うんでしょう?

浅野:まあ、僕のなかでは全部繋がってるんですけどね。PEACE PILLやSAFARIでそれぞれ追求してきたこともそう。あとは英語の勉強も大きかったですね。(俳優として)アメリカに行って、向こうの作品に出るためには英語の勉強をしないといけない。そういう日々の繰り返しが、作曲にも繋がってるんだと思います。普段から海外に行くことが多いので、向こうに機材を持っていって、空いてる時間にひたすら録音するんですよ。僕はテクノもやっていて、YAMAHA QY100を使ってループを作ってるんですけど、毎日いろいろ追求しているうちに、自分はループが好きなんだと気づいて。SAFARIで「ヤダ」って曲を作った時も、ひたすらループで、なおかつそこにメッセージが乗ってて、凄くファンキーになったんです。

一シンプルな歌詞を繰り返して、どんどんグルーヴを作っていったりで。

浅野:そうですね。そこから、SODA!で最初のほうに作った「GET POWER!」や「FUNK PUNK YEAH!」みたいなアイディアも出てきて。いろいろ追及してきた結果、今までどこか表面的にやってたものが、もっと自分の内面に寄せて作れるようになったんです。そうなると物凄く楽しいし、どんどんエネルギーが広がっていくんですよね。内面から生まれるものだから、隠すこともないし、恥ずかしがる必要もない。だから今は、「俳優で音楽やってます」って堂々と言えるようになったのかなと。



一いままで言えなかったのはなんだったんですかね?

浅野:俳優のほうは(昔から)天邪鬼にできてたと思うんですけど、ロックとかバンドに対しては憧れがあったんでしょうね。憧れがあると、どうしても真似をしちゃう。やっぱり真似をしているうちは本質的なものにはならないじゃないですか。でも、そうやって真似をし続けたことで、自分の本質に近づくことができたんだと思います。表面的にかっこいいバンドを目指すんじゃなくて、「これが言えればいい」「これを繰り返せばいい」と自分のなかで答えを出せるようになり、それが自信に繋がったと言いますか。

一自分の中で、パンクを表現する仕方が変わってきて。

浅野:そうだと思います。例えばイギー・ポップにしたって、今ではパンクの教祖だと言われてますけど、当時はそんな概念もなかったし、彼自身もそういうつもりでやってたわけではないと言ってますよね。ジョニー・ロットンもそう。周りがそう言ってただけで、自分から「俺がパンクだ!」と言ってたわけではない。そういう事だと思うんですよ。「あの人って俳優だよね」「あの人ってキチガイだよね」っていうのは周りが決めることじゃないですか。その方がよりリアルっていうか。それで言うと、僕はパンクのつもりもないし、ロックのつもりもないし、何でもない。誰かが決めてくれたことでありたいなと。そういうふうに「パンク」と向き合いたいっていうか。周りにもそういう方々が多かったですしね、ハードコアの人しかり。

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