スコセッシとデ・ニーロが語る「我々が学んだ10のこと」

5. 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を観たアメリカ合衆国大統領顧問団の一人は、この映画に描かれている金融業界は嘘偽りと言った

顧問団の誰の発言なのかは明らかにしなかったが、株式ブローカーだったジョーダン・ベルフォートの栄光と転落を描いたスコセッシの2013年の作品をウォールストリートの「虚偽の描写」と呼んだ人がいた。しかし、スコセッシはベルフォートを普通のアメリカ人と捉えていたと述べて、ハーマン・メルヴィルの小説『詐欺師』を例に挙げて、チャンスと虚勢が常に野放しのまま放置されているアメリカ人の意識に深く刷り込まれた歴史を示した。

6. 『キング・オブ・コメディ』でのジェリー・ルイスとの作業を通してスコセッシはプロの俳優と仕事をする術を学んだ

1982年の『キング・オブ・コメディ』以前のスコセッシは、比較的低予算で同じグループの人たち(デ・ニーロも含む)と一緒に仕事をしてきたため、自分の作品に対して自家栽培的な意識を持っていた。それこそ、自分の両親すらちょい役で出したこともあるほどだ。

トークショーの有名MCのジェリー・ラグフォード役にジェリー・ルイスを配役したことによって、スコセッシはプロの役者との映画づくりの何たるかに突然気付いたという。ルイスは自分のシーンを撮影するときしか現場に来ないし、自分のセリフを読み、きっちり仕事をこなし、撮影日にそれ以上仕事がなければ早々に帰宅させることをスコセッシに求めた。つまり、役者の時間を全部使えると監督が思い込むのは間違っていることをルイスが教えてくれたと、スコセッシが述べた。

7. 『カジノ』はスコセッシ版『失楽園』(旧約聖書『創世記』第3章)

スコセッシとデ・ニーロは1995年の『カジノ』のワンシーンを紹介した。このシーンでは、砂漠のど真ん中でジョー・ペシがデ・ニーロ演じるキャラクターに向かって罵り言葉満載で口撃する。このときのペシのセリフは「まるでジャズ」を聞いているようだったとスコセッシが言い、「自分なりの『失楽園』の解釈が『カジノ』だと思っていると続けた。「神は彼らに罪の楽園を与えた。そう、ラスベガスだ。彼らにはできないことなどないのに、ことごとく失敗する。そして、最後に楽園から追放されるんだ」と。

Translated by Miki Nakayama

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