スコセッシとデ・ニーロが語る「我々が学んだ10のこと」

8. 激辛口で有名なライター、ノーマン・メイラーは『レイジング・ブル』を気に入った――ファイトシーン以外は

激烈と呼ばれる辛口批評で有名だったノーマン・メイラーも当初『レイジング・ブル』の応援団長で、スコセッシにこの回想録の映画化を強く勧めた一人だった。面白いことに、公開後に暴力的なボクシング・シーンがかなりの論争を巻き起こしたにもかかわらず、メイラーはファイトシーンを「つまならい」と言っていた。

「あなたのおかげでファイトシーンを入れられた」と、『レイジング・ブル』公開から2年後くらいにスコセッシはメイラーに伝えた。そうしたらメイラーは「うん、私はあれだけが気に入らなかった」と答えたという。

9. グラハム・グリーンとジェイムズ・ジョイスの本を教えてくれたのは一人の神父

スコセッシは、自分が育った1940年代後期から1950年代初頭のマンハッタンのローワーイーストサイドについて、さまざまデ・ニーロに話して聞かせ、そこで体験した荒々しく崩壊する世界が自分の作品に大きく影響を与えていると述べた。彼の話によく出てくるエリザベス通り253番地にあった共同住宅の3階で育ったことを引き合いに出して、スコセッシ作品に繰り返し登場するシーンでもある、非常階段から「神の目線」で下を見ていた自身の子ども時代を語った。

しかし、そこの教区の神父だったプリンシペ神父が、現実逃避の手段として子供のスコセッシに古い小説をたくさん教えてくれたという。「神父様は『ここから離れなさい。ここにもいい人はいるが、ここでの暮らし、21歳で結婚して子供を作るという人生サイクルに従う必要はないのです。チャンスを掴んで、現世で手に入れられる利点を活かしなさい』と言っていた」とスコセッシが説明した。

10. 新作『アイリッシュマン』についてはそれほど語らなかったが、この作品の延長線上に次回作品が作られることだけ教えてくれた

対談の終盤になって、会場からNetflixで放送される予定の新作『アイリッシュマン』について教えてほしいという声が出た。それに答えてスコセッシは、「これまで作ってきた作品と同じ感じだ。だが、たぶん、これまでとは異なる観点から描かれたものだと思う。歳を重ねた私たちの世間や物事に対する見方が特別なものになっているはずだからね」と、謎めいた説明で観客を煙に巻いた。

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE