ニルヴァーナとともに生きたメンバー、家族、友人が語る、カート・コバーンへの賛辞

ベサニー・コセンティーノ(ベスト・コースト)
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Imeh Akpanudosen/Getty Images
彼は自分が書きたいを書くことを怖れなかった

私の父はミュージシャンでニルヴァーナが大好きだった。私は「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」のミュージック・ビデオをMTVでみて「何これ?どんな音楽なの?」って言ったのを覚えているわ。すごく興味がそそられたの。部屋にカート・コバーンのポスターを、ノー・ダウトとかその頃にハマっていたミュージシャンと一緒に額に入れて飾っていたわ。私の一番好きなアルバムはブリーチ。アグレッシブで怒りがこもっているというか。ニルヴァーナはサイケデリックになる前の初期のビートルズのように、感情や人生で経験してきた状況についての曲を書いていたわ。ニルヴァーナもビートルズもそれをしていた。その方が共感できたし、そういう自分が書きたいことを書いて何を言うのも怖れなかったところが、私がずっと作詞家、作曲家としてカート・コバーンを心から尊敬していたところなの。

イギー・ポップ
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Carlos R. Alvarez/WireImage
彼は世界の傷に触れた

カート・コバーンの才能に気づくことができただろう。妖精のような歌い方だったが自分に酔った感じでもなく、暴れまわってすべての曲に全力を投じていた。邪悪な小人のように背中を丸めて彼はギターを持っていたが、彼のその声が持つ力は確かなものだった。ライブが終わると彼はドラムに突っ込んだ。私がロックンロールで本当に良かったと言える15ぐらいあるライブのうちの1つだった。

私は『ネヴァーマインド』を買って、「これは本当にすばらしい」と思った。ニルヴァーナは真のダイナミックスを実現していた。オーディエンスを落とすところは落とし、上げるところは上げ、スイッチを入れるとさらなる境地へと連れて行ってくれた。彼らは急ぐことなくロックし、すばらしいメロディを作りつづけた。時代遅れ、ダサい、説得力に欠ける、といったこととは無縁のエモーショナルなサウンドであった。

彼はまるで「ジョニー・B.グッド」だった。彼は私が思いつく限り、小さな田舎町出身の家族のいない貧しい子どもが若者の世界に感情を大きく揺さぶる爆発的な影響を与えるような、ロックンロール界最後の実例だった。そこには飾り立てるメッキのパーツは1つもなく、ルーツに根ざしたとてもシンプルなものであった。どこの誰かもわからなかった誰かが世界に飛び出し影響を与えた。彼は世界の傷に触れたのかもしれない。(2008年)

Translated by Takayuki Matsumoto

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