営業社員用にラップ動画製作も オピオイド製薬会社重役が利益供与で有罪判決

米ボストンで、陪審から共謀罪で有罪判決を言い渡されたInsys製薬の創業者ジョン・カプーア被告。(Photo by Steven Senne/AP/REX/Shutterstock)

アメリカ時間2日、ボストンの陪審は製薬会社Insys社の創業者ジョン・カプーア被告および同社の重役4名に対し、フェンタニル由来薬物の売上増加を共謀したとして、有罪判決を言い渡した。

陪審は15時間にわたる評議の末、被告5名が医師に賄賂を渡し、がん患者の認可治療薬である舌下フェンタニルスプレー薬「サブシス」を処方させたと判断した。モルヒネの50~100倍以上も強力な合成オピオイドであるフェンタニルは中毒性が高く、極めて危険。アメリカ国立薬物乱用研究所によると、2016年にアメリカ国内で起きたオピオイド関連死亡件数の半数近くが、フェンタニルの過剰摂取によるものだという。

陪審は、Insys社の重役が医療関係者らにストリップダンスなどの利益供与を行なって薬物を処方させたほか、薬物の宣伝イベントをでっちあげ、イベント講演料という名目で医師らに金銭を提供したと判断。また保険業者らに対しては、患者がこの薬物が必要としていると吹き込んで、売上増加を図ったという判断に至った。

アリゾナを拠点とするInsys製薬は1990年創業。かつては全米トップの製薬会社で、一時期は3億ドル以上の売上高を誇っていた。検察側は2012~2015年の裁判で、同社が医師をターゲットにした積極的な販売戦略を打ち立て、医師に賄賂を渡し、見返りとして患者に薬物を勧めてもらっていたと主張した。

元営業社員の証言によると、Insys社の賞与体系はフェンタニル由来薬物の処方量に応じて決められていた。医師が患者に処方した投与量が少ないと、営業社員は24時間以内に、その旨を上司に報告しなければならなかったという。一時期、同社は営業社員向けのラップ動画を制作し、医療関係者らに薬物の滴定、つまり投与量増加を売り込むよう促していた。2015年に制作された動画は裁判でも証拠として提出されたが、以下のような歌詞が含まれていた。「滴定万歳、問題なし/新規患者さん、いらっしゃい」



Insys社の裁判は、オピオイド危機に関与した責任を製薬会社に求めるという、アメリカ政府が力を入れている動きのなかで行われた。アメリカでは近年、何十万人もの命がオピオイドによって奪われている。ごく最近では、ニューヨークとマサチューセッツの州司法長官が複数のオピオイド製薬会社を相手に訴訟を起こした。そのなかのひとつPurdue製薬を所有するサックラー家は、強力なオピオイド薬オキシコンチンを1996年より販売。オピオイド危機のきっかけを作った存在とみられている。

Translated by Akiko Kato

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