原作著者ジョージ・R・R・マーティンが語る『ゲーム・オブ・スローンズ』の終焉

『氷と炎の歌』シリーズの著者、ジョージ・R・R・マーティン(Rich Polk/Getty Images)


ーあなたが初期に、2人について書いた一節を読んでも良いですか?

ああ、もちろん。

 “公平とは言えなかった。サンサはすべてを手にしていた。サンサは2歳年上で、アリアが生まれた時、おそらく、何も残っているものは無かったのだろう。サンサは縫い物ができたし、歌って踊ることも得意で、詩を書くこともできる。それに、お洒落でもあった。ハープと鈴を演奏することができて、その上、美しい。サンサは母親の高い頬骨と赤褐色の髪を受け継いでいた。アリアは、父親に似ている。髪の毛は艶のない茶色で、顔立ちは面長で険しかった。”

ーこの姉妹について、もともとあったアイディアはどのようなものだったのでしょうか?

それはしばらく長いこと前に遡るね。本当に初期のことだから……僕は、1991年にこの物語に取り掛かり始めたんだ。ハリウッド関連の仕事で多忙になる前に、100ページほど物語を書いた。その後2年ほど空いて、またこの物語に戻ってきたんだ。今、君が読んでくれた一節は、まさに僕が書いた、100ページの中にあったものだ。その時、僕は当主であるエダード・スタークの家族を作り上げようとしていて……子供が数人いる、大きな家族にしたいと思っていた。僕は中世に実際にあったような、幼い頃に死んでしまうような子供にはしたくなくて、少しズルをした。かつての世の中では、子供が小さいときになくなって、とても苦しい思いをしたと言うからね。

だから最初に、ブランというキャラを作り、雪の中でダイアウルフの子犬を見つける流れにした。ブランはその章において、読者の視点の役割を果たしていて、ロブ、ジョン、シオンは彼と一緒にいる。そして、父親と一緒に、ある男性が、頭を落とされる現場に行くんだ。彼らが見に行った光景は、中世における男性中心の社会を映し出している。そこは歴史に忠実に作ろうと思っていたんだけど……やっぱり、そこには女性のキャラクターも欲しいな、と感じたんだ。

それで、その章の後半で、ウィンターフェルについて書こうと思ったときに、女性や、若い女の子たちが、こういった社会の中でどんな役割を与えられているか、についても書きたいと思った。差別化のために、全く正反対の性質を持った姉妹を登場させることにしたんだ。中世は、男性社会だった。こう言うと、なんだか頭が悪く見えるし、一般論を述べるのにうんざりしているところもあるけれど— —でもやっぱり、その当時、女性の権利は非常に制限されたものだった。決められた結婚をさせられることも普通だった。しかもそれは、良い生まれの女性の権利だ。貧しい家に生まれた女性には、その権利すらない。でもこの本の中心を担う家族は、貴族の一家だ。だから僕は、そこを書くことに集中したんだ。同時に、この時代は優雅なロマンスが生まれた時代でもある:気高い騎士、上流階級の麗人、お姫様、と言ったような人物たちのね。それはフランス、ブルゴーニュ、そしてイギリスやドイツを含む、ヨーロッパ中の王室に広まって行ったんだ。それはいまも、僕たちのルーツになっているよね。例えば、ディズニープリンセスの物語で描かれるような——あらゆるプリンセスのおとぎ話とか——この中世フランスにおける、ロマンスの時代に、吟遊詩人に語られてきたようなことが、今の僕たちにとって馴染み深いものになっている。

サンサは、完全にその世界に浸って、愛していた。彼女は騎士同士の一騎打ちであったり、自身の美しさを歌う吟遊詩人や、素敵な騎士、権力のある女性になること、そしてお姫様や女王様になることのような、すべてのロマンチックなことを夢見ていた。一方でアリアは、その真逆を行く女の子だ— —自分の与えられた役割にイラ立っていて、最初から不快感を露わにしていた。お裁縫は大嫌いだったけど、剣で戦ったり、馬に乗って狩りをしたり、泥の中でレスリングをする方が好きだった。現在では、我々が“トムボーイ(訳注:ボーイッシュな女の子)”と呼ぶ存在だね。だけど舞台となっている中世ではもちろん、そんな言葉は無かった。だから僕は、その言葉を本の中で使っていないんだ。でも、読者のみんなは分かってくれたと思う。

そんな流れを経て、全く違ったタイプの2人のキャラクターが出来上がって行った。そして彼女たちは当然のように、お互いに苛立ちを募らせて行くんだ。

ーアリアに関しては、どなたかモデルがいたのですか?

特定のモデルがいたわけではないけれど、これまで僕が出会ってきた多くの女性が、アリアのような要素を持っていたよ。特に僕がまだ若かった、60年代とか70年代とかは——性革命とか、女性解放運動があった時代だ。若い女性はみんな、「私は素敵な旦那さんを見つけて、専業主婦になるの!」なんて、口が裂けても言わなかった。その経験が、アリアの元になっていると思う。あるシーンで、ネッドがアリアにこう言うんだ。「いつの日か君が大人になったら、良き男性と結婚して、城の主人になるんだよ」でもアリアは、「嫌だ。それは私の役割じゃない。それはサンサがやることで、私は違う」と言い返す。僕は似たようなことを言った女性を知ってるんだ。「私は、ミセス・スミスになるなんて絶対に嫌。私は私でいたいと思ってる」とね。

Translated by Leyna Shibuya

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