石川さゆりが語る、若者や世界に伝えたい日本の音楽「民謡はロックと対峙しても揺るがない」

日本古来から歌い継がれてきた民謡を収録したアルバム『民~Tami~』をリリースした石川さゆり


―大雑把に言えば、ロックは音を重ねて完成に近づいていきますが、『津軽じょんがら節』での矢野さんとのセッションなどが典型で、引き算の美学で間を作って、その間でも何かが表現できるんですよね。

そうだと思いますね。それは海外に行った時に感じますね、間の文化・引き算の美学は日本独特の表現、美学のひとつだなぁって。

―こうした日本の古典を扱った活動は今後の活動には影響していきますか?

これも私のひとつです。なので、これで変わるということはない。これも私。〝これで〟じゃなく、〝これも〟面白く展開していきたいです。

―楽しそうだなぁ。そのバイタリティーは一体どこから来るのですか?

だって生きてるんだよ、私たち。生きてるっていうことは変化することなのよ。良くも悪くも。

―まさにローリングストーンですね(笑)。

そう。良くも悪くも(笑)。だからいろいろなことをやって楽しんだり、傷ついたりしなかったら、生きてたってつまんないじゃん。あとは自分の知らないことがいっぱいありすぎるから、「ほー!ほー!」って思ったことには「で?で?」って行きたくなっちゃう(笑)。

―でも新しいことやるのって楽しいですけど面倒臭くないですか?

面倒臭いし、苦しいです。だって、若い時みたいに脳みそも柔らかくないから。でも反応はしちゃうんです。もう、性(さが)。「なんでこんなことになってるんだろう?」ってバタバタしてると「言い出したのはさゆりさんですよね」ってみんなに言われて「そうだね」って言いながら苦しみながらやってる。でも、面白いんですよ。

―ところで、民謡という無形なものだけではなく、日本には民藝という有形な庶民の藝術もありますが、音楽と比べて飛距離が出ないのが勿体ないなって思います。

土着は土着のまま、そこで埋もれていくことを美学としてるところがあり、それはそれで素晴らしい。でも最小公約数じゃなくて、それをもっと広げていかないと音楽っていけないと思うんですね。最大とまでは言わないけども、いいものはいいってみんなに伝えていきたいって思っています。

―音楽ほどいっぺんに人とコミュニケーション出来るツールはないですからね。

亀田(誠治)さんが今度日比谷で音楽祭するんですけど、それに私も参加させていただくんです。そこでもまた面白い出会いがあったらいいなって思っていて。それくらい音楽って自由だし、異ジャンルの人たちも勝手に飛び超えて混ざっちゃうんですよね。で、なんか面白いことが起きたら素敵なことだなって。それができるのが音楽じゃないかなって、私は思っています。もちろん、腹の足しにもならないものが音楽なんだけど、人を繋いでいく不思議な力もあるし。一人でも大勢でも寄り添うものが音楽だし。だから、なんか人間臭くやっていきたいですね。すごくデカイことと、とっても地味なことと両方やってみたいの。『民~Tami~』、とにかく聴いてほしいですね。




石川さゆり
熊本県出身 1月30日生まれ。1973年シングル「かくれんぼ」でデビュー。1977年「津軽海峡・冬景色」でレコード大賞歌唱賞を受賞したほか、数々の賞を受賞。「NHK紅白歌合戦」へも同年に初出場を果たす。以後「能登半島」「天城越え」「風の盆恋歌」「ウイスキーが、お好きでしょ」など、ヒット曲多数。自身のリサイタルを中心に、歌と芝居を融合させた「歌芝居」を確立。各方面から賞賛を受け、「歌芝居?飢餓海峡」では、第62回文化庁芸術祭大賞を受賞。その後も、ジャンルという垣根の無い音楽制作に取り組み発表した「X-Cross-」は、第56回日本レコード大賞優秀アルバム賞を受賞。45周年を迎えた2017年、第68回芸術選奨 文部科学大臣賞を受賞。6月に開催される「日比谷音楽祭」に出演予定だ。


アルバム「民-Tami-」
3月20日発売

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