ボズ・スキャッグス来日公演、東京公演初日は代表曲のオンパレード

東京公演初日のボズ・スキャッグス(Photo by Masanori Doi)


今回のツアーは、昨年リリースされた最新作『Out Of The Blues』を引っさげてのワールド・ツアーの一環であり、ブルーズィな側面とヒット曲で綴られたAORの側面とがバランスよく選曲されているので、新旧どのファンにも受け入れられるように配慮されているのがポイントとなっている。

さらに注目すべきは世界遺産的ベーシスト、ウィリー・ウィークスが参加していること。ダニー・ハサウェイの名盤『ライヴ』(1972年)の演奏で一躍有名になった彼は、ジョージ・ハリスンやエリック・クラプトン、ドゥービー・ブラザーズ、矢沢永吉など世界中の名だたるアーティストのツアーやレコーディングに参加したことで知られ、ボズとはアルバム『Memphis』(2013年)のレコーディングからレギュラー・メンバー化している。71歳となる彼は、今回初めてボズの来日公演に参加してくれた。ずっしりと重たく安定感があり、トーンを絞った音質で決して前へと出てこないのにも関わらず、まぁ存在感のあること。惜しむらくはベース・ソロが聴けなかったことで、これは次回に期待したい。


Photo by Masanori Doi

またウィリーとドラマーのテディ・キャンベルは黒人同士で、ブルーズィでソウルフルなグルーヴを叩き出し、息もぴったり。ボズはよくインタヴューで自分はソウル・ミュージックを奏でているんだと答えていたが、まさにそれを聴いているような素晴らしいリズム・セクションだった。テディ・キャンベルはコーラスにも参加していて、キーボードの(お馴染み)マイケル・ローガンとパーカッションのブランリィ・メヒアスと3人で複雑なコーラス・ワークを見事にこなしていた。ボズのライヴには女性コーラスがつきものだが、今回は野郎だけ(失礼!)で美しいハーモニーを聴かせてくれたのも収穫。もうひとりのキーボーディスト、エリック・クリスタルは2002年からボズのバンドに参加していて、サックス、キーボード(サンプリング・ブラスは最高!)、そしてピアニカなど、マルチな活躍を見せてくれた。

AOR/フュージョンには欠かせないギタリストのマイク・ミラーの存在感も素晴らしかった。チック・コリア・バンドやジノ・ヴァネリ、イエロージャケッツ、カリズマ、ブランドXに至るまで、様々なバンドに参加して壮絶なギター・ワークを聴かせてくれたマイクだが、なぜかボズのアルバムのレコーディングには参加してこなかった。ボズとマイクのギターの贅沢な掛け合いが聴けるのはコンサートのみなので、フュージョン好きはぜひ会場に足を運ぶべし。昔からステージ上をのそのそと歩き回るのがクセだったマイクだが、歩きながら繰り出される超絶テクニックは必見だ。

そしてもちろん74歳という年齢を微塵も感じさせないボズの歌声とギター・ソロに体中が熱くなった。コンサート冒頭では高音域を歌わずセーブしていたので、ひょっとして喉を痛めているのではと心配したが、エンジンがかかりだしてからは声がよく出るわ、よく歌うわと、明日声が出なくなるのではないかと逆に心配するほど歌いまくっていた。彼の武器であるファルセット・ヴォイスも健在。ギター・テクニックに関しては、年々うまくなっているのではないかと思えるほどに。彼のルーツであるブルースの曲ではボズ自身がソロを弾き、「Look What You’ve Done To Me」ではボズとマイク・ミラーの2人が赤いストラトを抱え、アンコールでは2人がギター・ソロ・バトルを聴かせるなど、ボズのギタリストとしての腕前も堪能することができた。


Photo by Masanori Doi

セット・リストは非公開なのでここでは特筆すべき点のみ挙げてみると、まずはとにかくボズの代表曲のオンパレードだったということ。新作からのブルース・タイムでは、照明もオレンジとブルーのみのジャズクラブ的な演出に留めてじっくりと音楽に浸らせてくれ、代表曲のヒット・パレードではカラフルでド派手な演出に。なによりも嬉しいことに彼の名を世界に知らしめた名盤中の名盤『シルク・ディグリーズ』からは歴代最多となる7曲が演奏されたのだから、周辺のおじさんAORファンたちは悶絶、絶叫しっぱなしで、さらに感極まって悲鳴をあげる女性がいてボズを失笑させるなど、会場は完全に興奮の坩堝状態に陥った。

アンコールでは近年のライヴで定番となっているボズの公式デビュー作『Boz Scaggs』(1969年)からのブルース・ナンバー「Loan Me A Dime」や、チャック・ベリーのカヴァー曲「You Never Can Tell」が聴けたし、ダブル・アンコールでは予定にはなかった「Thanks To You」(『Dig』収録)が飛び出すなど、嬉しいプレゼントも。来日直前のインタヴューでボズはセット・リストを日替わりにすると発言していたが、少なくとも仙台と東京初日では3曲ほど変わっていたので、東京公演2日目以降がどのような選曲になっていくのか楽しみだ。

今回はいつにも増してMCが短く、「The Feeling Is Gone」を歌う前に「私のヒーローのひとり、ボビー“ブルー”ブランドの曲です」とちょこっと説明した程度。休憩なしで正味1時間50分のコンサートはあまりにも濃厚で、ブルースとソウルの豪華なレパートリーに酔いしれた最高のライヴだった。ボズの日本公演は残りわずか、令和元年に絶対観ておくべきライヴであることは間違いないだろう。

文:片山 伸

※関連記事:ボズ・スキャッグスが語るAOR黄金期、ブルースの再発見「ヨットロックは大嫌いだ」



BOZ SCAGGS 
out of the blues tour

【仙台】5月5日(日) 仙台サンプラザホール       
【東京】5月7日(火)〜9日(木) Bunkamuraオーチャードホール
【大阪】5月11日(土) オリックス劇場
【広島】5月13日(月) 広島JMSアステールプラザ 大ホール
【名古屋】5月14日(火) 名古屋市公会堂
       
チケット
S:¥13,000  A:¥12,000(税込)

来日予定メンバー:
テディ・キャンベル(Dr,Vo)
ウィリー・ウィークス(Ba)
マイケル・ローガン(Key.Voc)
エリック・クリスタル(Sax,Key)
マイク・ミラー(Gt)
グレッグ・ウィエクゾレック(Percussion,Vo)

公演詳細:
https://udo.jp/concert/BozScaggs


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