アジカン後藤正文と妹沢奈美が語る、ヴァンパイア・ウィークエンド最新作の全容

左から妹沢奈美、後藤正文(Photo by Kayoko Yamamoto)



妹沢:それで思い出したんですが、今回、細野晴臣さんの曲をサンプリングした「2021」がありますよね。

後藤:そうですね。



妹沢:最近はマック・デマルコとか、先ごろ来日していたコナン・モカシンをはじめとして、細野さんや山下達郎さんや大貫妙子さんを再発見して日本の当時のシティ・ポップの音の作り方に影響を受けた、みたいな動きがアメリカのインディーズにあるじゃないですか。

後藤:はいはい。

妹沢:で、今回エズラが細野さんの当時の音をサンプリングしたのは、アナログの音作りとかにも関心があったのかな、とか。どうなんでしょうね。

後藤:そうですね。スタジオの機材を見てみたいですけど、でも多分、結構アナログ機材を通してると思うんですよ。テープを使ってるかどうかはわかんないですけど。割と今、ヒップホップもプラグインでみんなやるんですけど……プラグインというか、アプリケーションですよね。要は、コンピューターの中で完結することが多い。アラバマ・シェイクスとかはね、録音の時はプラグインでやったけど、結局最後同じ機種で音を通し直して。本物の機材でやる、みたいな。

妹沢:へぇー。こだわりの音作り。

後藤:こだわり。まぁ、ちょっとやっぱ、変わるんですよね。なんかね、何が変わるかわかんないんだけど、不思議な倍音が増えたりとか、音が絡み合ったりとかね。ただそのミックスで何を使ってるかは、ちょっとわからない。今後多分、情報が出てくるはずなんで、見てみたいなって思います。

妹沢:後藤さんがもし今作に関して彼らに何か一つ質問できるとしたら、何を聞いてみたいですか?

後藤:そうですねー。うーん、一つだけとなると…。

妹沢:(笑)三つでもいいですよ。

後藤:ミキシングに使った機材を教えてほしい。あと、どんなマイクを使ったか。あと録音で、ラインを多く使ったのか、マイクを多く使ったのかのバランスを聞きたいですね。今は結構ライン録音が多いんですけど、彼らはどのぐらい使ったのかなと。

妹沢:ああ、確かにマイクで録音したような凄く空気感のあるギターの音ですよね。

後藤:そうなんですよ。でもそれも、今やラインで録音して後から(ミックスが)できる時代なんですよね。あとから、さもホールでやった様にミックスできる時代なんで。だから、その辺りがどの程度なのか、なんなら全部生演奏だったのかとか、そういうの聞いてみたいですね。

妹沢:逆に全部生演奏だったら、これまでのヴァンパイア・ウィークエンド的なイメージと反対だから、面白いですね。

後藤:そうですよね。

妹沢:作りこんでいく人たちでしたから。

後藤:だから、ギターはパーツで録ってったのかなとも思います。ダビングを重ねて面白くしていったような感じはするので。ただ例えばリズムセクションはどうやって録ってるのか、ドラム一発で回したのかとか、そういう録音の行程を、どの曲かにフォーカスして聞いてみたい。どういう手順で録ったかに、興味があります。でも多分ね、その話を読みたい人って日本でもあまりいないかも。

妹沢:(笑)読みたいです。ちなみに、このスタジオ(Sony Music Studios)も今作でヴァンパイアは使ったんですよね。後藤さんも、前に使ったことがあって。

後藤:使いましたね。

妹沢:ここは、特徴としてはどういう感じなんですか?

後藤:ここはね、あのね、バブリーです(笑)。ザ・バブリー。やたら高いっていうね。

妹沢:あははは(笑)。

後藤:ソニーのミュージシャンが借りても高い(笑)。だからクレジット見て「ソニー乃木坂スタジオ」って書いてあったら、あ、制作費あるんだなって思ってもらっていいスタジオなんで。

妹沢:(笑)なるほどー。でも良いですね、彼らは6年ちょっとかけて、リラックスしながら自分たちらしさを取り戻して、自然に曲ができて、アメリカの大らかなところで録音して、きっと音録りも凄く工夫しながら録って。ミュージシャン冥利に尽きるんじゃないですか? 

後藤:や、本当に音が良いですね、この新作。ここ6年くらいで、コンピューターの中のプラグインってやつがものすごく発達したところもあるんで、そういうの影響もあるんでしょうけど、それににしたってやっぱり音が良い。アメリカのトップを走るようなバンドはサウンドが凄いなと思って、感激しました。


Photo by Kayoko Yamamoto

妹沢:そういえば前に後藤さん、向こうのエンジニアさんが録音の時にヘッドホンで出音を確認したりしてると、実はむしろ良い音のアルバムができたりする、みたいな話をされてましたよね。

後藤:日本でやるとね、みんな小さいスピーカーだけで完結させようとするんですよ。そうするとめちゃくちゃ小さいサウンドデザインになって、良くない。そういう悪い慣習があって。

妹沢:私ね、今作をヘッドホンで聴いたんですか、「あーここも面白い、ここも面白い」っていう発見があったんですよ。

後藤:そうそう、だから小さいスピーカーだけで録音するんだったら、ヘッドホンでやった方が絶対良くて。アメリカ人とは僕はロックのサウンドでしかやったことないけど、いきなり一番デカいスピーカーでドラムのチューニングとか始めるんです。ボーン!とか鳴ってて、うるせー!と思って、「大丈夫なのこの人たち!?」って見たら、スタジオにいっぱい耳栓が転がってた(笑)。他の人も一応うるさいと感じてるんだなと、安心したんですけど。(笑)でもデカい音で聴かないと、でかい口径のスピーカーで聴かないと、低音が聞こえないんですよね。

妹沢:なるほど。

後藤:でも最近イヤホンとかヘッドホンも、安いやつでもめちゃめちゃ性能が良いんで。ちゃんと選んで買うと、よくわかる。だからデスクトップだけで作ってるアメリカ人のトラックメイカーの方が、サウンドデザインが良いというマジックが起きるんですよ。

妹沢:そっか。いや、この新作はすごく面白い音作りだから、もしかしたらヘッドホンで色々聞きながら制作したのかな、どうなのかな、なんて思ったんですよね。

後藤:そうですよね。でも多分アメリカは、デフォルトで音が良いんだと思います。建物がデカかったりとか、構造として音がちゃんと抜けて反響しないようになってたり。部屋のチューニングが良くできてるんじゃないですかね。あと、文化もあると思います。カリフォルニアとかロスって、ローをちゃんと聴く文化がある。ダンスミュージックとかハードコアパンクとかの人たちでも、ウーファーで鳴らすようなローを体感するカルチャーがあるらしくて。やっぱあっちの音楽はドゥーンってくるところがありますね。


Photo by Kayoko Yamamoto

妹沢:あと残された時間が2分だそうです。最後の話になりますね。私はライナーを今回書きまして、良ければそちらも是非読んでみてください。あと、ボーナス・トラックも面白いですよと、一言(笑)。

後藤:あ、そうですね、ボーナス・トラック。ボブ・ディランみたいな曲がある(笑)。急にディランみたいになったから、びっくりした。

妹沢:あと、驚きの一曲があったりもする。

後藤:そうですね。あまり言っちゃいけないと言われたんですけど。呟かなくてよかった、と思った。(笑)

妹沢:(笑)。では後藤さん、最後に一言お願いします。

後藤:僕はこの新作は、とにかくサウンドデザインそのものが、インディーロックの新しいものを提示していて、インディーロックはそのままアップデートできるということを証明したと思いました。もう少し化学調味料みたいなのをいっぱい入れないと変わらないのかなと思ってたら、「いや、できますよ」みたいな。天然素材で良いものを作っちゃったという作品です。もちろん色んな、例えばここで弾く弾かないみたいな細かい工夫はありますが、それでも後続のロックバンドたち、特にギターを弾いている人たちにとっては、音作りの参考になる大きな一枚になると思います。めちゃくちゃ高いクオリティで、本作はそれを成し遂げています。


Photo by Kayoko Yamamoto




ヴァンパイア・ウィークエンド
『ファーザー・オブ・ザ・ブライド』

<日本盤CD>
2019年5月15日(水)発売
全21曲収録
SICP-6117 / 2,400円+税
日本盤限定ジャケット&初回仕様限定ステッカーシート封入 & 抽選でアーティスト・グッズが当たる応募ステッカー付
日本限定ボーナス・トラック3曲収録

<配信アルバム>
発売中
全18曲
再生・購入リンク:
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