往年の名曲で儲ける「カタログ・ビジネス」をレコード会社重役が解説

ー過去の楽曲を宣伝するにあたり、他にクリエイティヴを発揮していることはありますか?

他のアーティストを巻き込んだりはしている。アーティストが時々、もっとも影響を受けたアーティストはジョニ・ミッチェルです、とか、アレサ・フランクリンです、と言うのを見るだろう。昔だったら、「OK、実に興味深い、だけどこの記事を読んだ人々はレコード店に行ってアレサのアルバムを買うだろうか?」という感じだった。だが今では、「じゃあ、そのアーティストをチェックしてみよう」という話になる。グリーン・デイはコンサートの前に必ずラモーンズの「ブリッツクリーグ・バップ」を流していて、観客はみな「ヘイ、ホー、レッツゴー」って歌うんだけど、誰もバンドの名前を知らない。まずは彼らに情報を伝えるツールを用意しなくてはいけないんだ。自分が影響を受けたアーティストについて、熱心にファンに語ってくれるアーティストがいれば最高だ。そうすれば僕らも世代を超えて、より幅広い人々にアピールすることができるようになるからね。

他にもっとはっきりしていることがある。我々には素晴らしい楽曲が揃っていて、それだけでも非常に恵まれている。あとやるべきことは、最善のリリース方法を考えることだけ。新しいビデオを作るでもいいし、リミックスを作るでもいい。ちょうど去年プリンスでやったみたいに、誰も存在を知らない未発表曲を発掘するとかね。そうやって人々をあっと言わせることができた時こそ、より幅広いファン層を開拓できたなと実感できる瞬間だ。

ー再発見された過去の楽曲が、現代の音楽シーンに変化をもたらすと思いますか?

たしかに、現在のリスニング状況を見ると、若い世代は好きな音楽の選び方に私たち以上にずっとオープンなようだ。80年代は私自身、音楽に関しては完全にコアだった。自分好みのジャンル以外は聴かないという人もいた。今の時代はそうじゃない。「この曲はどうだろう? おお、いいね。もういっぺん聴いてみようかな」。そうやって、普段自分がよく聴くジャンルとは明らかにかけ離れた一風変わった曲を、映画やゲームの中で発掘している。もしそれがミュージシャンなら、彼らはきっと昔よりも幅広い音楽を取り入れることになるだろうね。

Translated by Akiko Kato

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