往年の名曲で儲ける「カタログ・ビジネス」をレコード会社重役が解説

フリートウッド・マック(Photo by Michael Putland/Getty Images)

ワーナーミュージックの全世界の音楽カタログを取り仕切るティム・フレイザー-ハーディング氏は、レッド・ツェッペリンやフリートウッド・マックらが残した名作の宣伝戦略を担った人物だ。

ストリーミングのおかげで、昔の音楽にも数多くのチャンスが巡るようになってきた。フレイザー-ハーディング氏はローリングストーン誌の取材に対し、過去のヒット曲をリバイバルさせる際の苦労と喜びを語ってくれた。

ー音楽業界全体におけるご自身の役割をどのように見ていらっしゃいますか?

音楽業界に携わることかれこれ30年経つが、カタログ・ビジネスをやるなら今が最高に面白い時期だよ。バランスを考えなくてはいけない仕事だからね。ストリーミングはどんどん拡大し続け、音楽業界全体の成長に貢献している――。だが、媒体(CDやアナログ盤など)の売上が高い伝説的なアーティストもいる。加えて消費者の幅も広がって、常に特定のアーティストを応援するコアなファンもいれば、初めてそのアーティストを知ったという人もいる。

カタログ部署の業務も、ワーナーの他の部署とは全く一線を画するようになったと思う。ワーナーの主力アーティストの大半はもうこの世にいなかったり、解散したり、他のレーベルに移籍していたりする。あるいは単に、世間から忘れられたか廃盤になっているかだ。我々は多くの時間をかけて、アーティストがいなくても話題が作れないかと知恵を絞っている。誰か別の人間に話題にしてもらうとか、シェアしてもらわなくてはいけない。今までさんざん目にしてきた楽曲の単なる焼き直しじゃない、本当にすごいぞ、とね。場合によっては、全くのゼロから始めるということもある。

ー時代を経て、音楽カタログはどう変わりましたか? もはや節目に合わせてボックスセットを売る、という単純な手は通用しません。

今の時代は、マーケティングと商品開発に同じ労力をかけるようにしなくてはいけない。ストリーミングに最適なレパートリーを最大限に活かすことが重要なんだ、若いオーディエンスの獲得につながるからね。だが同時に、自分たちが抱える偉大なアーティストは40年間音楽を作り続けていて、今もアナログ派だということも頭に入れておかないといけない。例えばフリートウッド・マックは、急激にストリーミングで人気を伸ばしているアーティストだが、いまだにツアーでCDも売っている。年齢層に関していえば、彼らは以前にも増して幅広い層にアピールしている。若年層を啓蒙しつつ、高い年齢層とのつながりも維持する術を心得ているんだよ。

ー若年層は売上の点でも、より魅力的なんじゃありませんか?

僕らに味方しているのは、ストリーミングという環境だ。そこでは、どんな楽曲であろうとその日の人気曲に若者がアクセスして、1日に30回は聴いてくれる。だが彼らの親世代は、「ホテル・カリフォルニア」が生涯のベストソングかもしれないが、熱の入れようは同じでも、1年に3~4回聴けばそれで満足する。ストリーミングに若者層が集まっていることは分かっているから、あとは彼らをどうやって自分たちの音楽に呼びこむかだ。

Translated by Akiko Kato

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