「女スパイ」疑惑のロシア人被告が上訴

マリア・ブティナ被告(Photo by AP/REX/Shutterstock)

アメリカの保守派の政治家やトランプ政権と裏ルートで不法に接触を試みた罪で有罪判決を受け、先月18カ月の禁固刑を言い渡されたロシア人工作員マリア・ブティナ被告が、刑期を不服だとして控訴している。

現在オクラホマ州チッカシェーのグレイディ郡留置所に拘留されているブティナ被告は15日、ワシントンDC連邦巡回控訴裁判所に申立書を提出した。申立書には、控訴の根拠は記載されていない。

ブティナ被告は「アメリカ合衆国の政治に権力および影響力を持つアメリカ国民との、非公式なコミュニケーション手段の確立」を試み、「そうした非公式なコミュニケーション手段を使ってロシア連邦に便宜をはかろうとした」として共謀罪に問われ、昨年12月に有罪を認めていた。ブティナ被告は何年もかけて全米ライフル協会で影響力のある地位を手に入れ、それを足掛かりに共和党の政治家に接触した。

政府は4月の量刑判決の前に行われた審議で、トランプ政権の国務長官候補者の選定に手を貸したとするブティナ被告の主張を重要視した。元FBIテロ対策職員は提出した陳述書の中で、ブティナ被告の「人物調査任務」(ロシアの諜報員が操りやすい、アメリカ人の重要人物を特定する任務)がロシア政府にとって「極めて重要な」価値があったと述べた。「ブティナ被告がロシア連邦に提供した情報は、熟練の諜報員なら何年も利用できるようなもので、アメリカ合衆国に甚大な被害をもたらしかねません」

ブティナ被告は自らを、アメリカとロシアの関係改善(と、ウラジミール・プーチン大統領のアメリカのケーブルTV局出演)を望む、純真無垢な平和の使者だと述べた。連邦地方裁判所のタニヤ・チャトカン判事は、裁判でブティナ被告の主張を却下し、被告の計画は「熱心な海外留学生の思い違いではない」と宣告した。代わりにチャトカン判事は、ロシアが「我が国の安全を脅かしている」と述べた。

裁判は米ロ関係に大きな傷を残した。ブティナ被告の刑期が言い渡されてほどなく、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、アメリカが「被告に対して何も証拠をつかんでいない」と強調し、被告の刑期は「きわめて遺憾だ」と主張した。

Translated by Akiko Kato

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