気候変動がメンタルヘルスに与える影響、米国内のケースをレポート

「歴史研究家は、これまで大勢の人間が非常に困難かつ激動の時代に直面してきたと言うでしょう」と、とある精神科医。「ですが、人類がこのような危機に直面したことはいまだかつてありません」(Photo by Sascha Steinbach/EPA-EFE/REX/Shutterstock)



もっとも必要な時にメンタルヘルスの治療を先延ばしにすると、治療へのアクセス問題のさらなる悪化を引き起こす。特に人種的・民族的マイノリティの間では、白人コミュニティよりもメンタルヘルスの治療を受ける機会が少ない傾向にある。その理由のひとつに、健康保険加入率の格差がある。2017年、保険未加入者の割合はヒスパニック系で19パーセント、アフリカ系で11パーセント。一方白人層では7パーセントだった。メンタルヘルス治療の分野では、多様性や異文化適応力が欠如していることも障壁となっている。2015年時点で全米の精神科医のうち86パーセントが白人だ。「メンタルヘルスはマイノリティ・コミュニティの間ではタブー視されています。島では自然災害に見舞われる以前から、そうした治療を受けることが困難でした」

フェレイラ氏は、医師らがソーシャルワーカーと協力して災害前に治療プランを立ててほしいと願っている。「避難所の場所や、メンタルヘルス担当医の情報を知っておくだけでも役に立つでしょう」と彼は言う。だが、それだけでは十分ではない。「自然災害時のメンタルヘルスの重要性を把握し、理解するリーダーが必要です」。フェレイラ氏は、気候調査はそのうちトラウマ調査と同義語になるだろうと予想している。研究者の調査方法にも適応力と迅速化が求められるだろう。「今までは気象学の調査方法にもとづき、データを集め、分析し、コミュニティのニーズを洗い出していました」と、外傷心理学者のフィグレー氏は言う。「これまで10年おきに大災害がありました。今では年がら年中起きています。研究者としては、複数の災害が同時発生する事態にも備えなくてはなりません」

その一方で、コロンビア大学公衆衛生大学院の気候および健康教育に関するグローバルコンソーシアムのように、さまざまな教育機関が気候変動を医学部のカリキュラムに取り入れている。CPAのポラック医師もOHSUで同様の試みをしている。「ある一定の人材提供ができるようにしています。(気候変動を)しっかり把握して、重要課題だととらえないと、有能な医療従事者の育成はできません」

CPAのような団体は、脅威を根源から絶つことにも力を注いでいる。CPAでは最近APAを旗振り役として化石燃料の使用を完全に止め、他の団体にも賛同を呼びかけている。「これは健康上の問題です。政治的論点はさておき、我々には患者と住民の健康を守る責任があります。当然、科学を否定する人々の肩を持つつもりはありません」というルイス医師は、自分のクリニックで地球温暖化を話し合うことに意欲的だ。最後には、人間の善意が未来へのカギとなると彼女は信じている。「私たちは他人を気にかけ、自分たちの環境を気にかけ、未来、そして家族の未来を大事に思っています」と彼女は言う。「誰だってそうでしょう。実在するごく一部のサイコパスは別ですが」

Translated by Akiko Kato

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