宇野維正が解説する、ドレイクが年間半分近くも全米シングル・チャートNo.1奪取という偉業を成し遂げた理由

ドレイク(Photo by Mat Hayward/Getty Images)

過去2年ほどの間に、ドレイクのシングルがどれくらい全米No.1を占拠してきたか数えてみよう。「God’s Plan」が11週、「In My Feelings」が10週、「Nice For What」が8週、さらにはトラヴィス・スコットとのコラボである「SICKO MODE」が1週。そう、彼は合計30週にもわたって全米No.1に君臨し続けた、2010年代最強のポップモンスターだ。時代の覇者であるがゆえに、多くの批判や嫉妬も向けられてきたが、それさえも彼は創作と人気の糧にする。果たしてドレイクは如何にしてこれほど圧倒的な存在になったのか? その理由を音楽ジャーナリストの宇野惟正が分析する。

2009年の「Best I Ever Had」での大ブレイク以来、10年経っても未だ来日公演が実現してない、そして現在のスケールに応じた単独公演など到底見込めそうにないこの日本で、「ドレイクはどうして批判されるのか?」というテーマ(というオーダーをもらいました)でコラムを書くことにどれほどの意味があるのか定かではないが、ともあれドレイクほど同業者や批評家やリスナーから恒常的にディスられてきたアーティストはいないだろう。そして、そうした状況がこれだけ続きながら(もうこれ以上はないほどの)成功を続けていることが示しているのは、ドレイクにとって自身に向けられたディスは創作への原動力であり、まるで夢を食う獏のように、ディスを主食にしてきたということだ。

マイアミのスーパーマーケットやストリートでドル札をばら撒く「God’s Plan」のミュージックビデオーーそこには学費に困窮する学生やシェルターに逃げ込んだ女性を支援する姿なども収められてはいるがーーを見てモヤモヤしてしまう人も少なくないはず。あのビデオが映し出す美談を素直に崇めることができる人と素直には楽しめない人、ドレイクはその両方、つまりすべての人に向けて音楽を作っている。(多くの日本人のように)「聴かない」「見ない」以外にそのドレイク・システムから逃れることはできないのだ。



ポップ系のステーションでもラップ系のステーションでも、ラジオやストリーミングサービスを流せばいつもかかっている、ドレイクの「One Dance」「God’s Plan」「Nice For What」「In My Feelings」、あるいは彼をフィーチャーした「SICKO MODE」「Going Bad」。そうした支配的なポップカルチャーに多くの人がうんざりした態度を示すというのは、どの時代にも起こってきたことだ。

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