ドレスコーズ・志磨遼平の創作論「罪深い人の罪深い作品に僕らは共感する」

自分たちを直接滅ぼすものとは?

―「チルってる」というような言葉遊び的な歌詞もありますが、「もろびとほろびて」という曲では“核兵器じゃなくて 天変地異じゃなくて 倫理観と道徳が ほろびる理由なんてさ”と謳い確信的にメッセージをぶち込んできてますね。


自分たちが滅びるというようなことを想像すると、昔だったらそれこそノストラダムスじゃないですけど、天変地異で、ある日突然人類が消え去るみたいなイメージだったと思うんです。核戦争みたいな、とにかく巨大なカタストロフが訪れる。そうじゃなくて、もっと老衰みたいに穏やかに自分たちから滅びていく。文句も言わずに滅びていく。例えば、平成は大きな戦争に一度も巻き込まれなかった初めての時代だったんですよ、ってニュースでやってましたけど、僕らは争いをなるべく避けて、皆が何にも怯えなくて生きていける、住みよい社会を目指してずっと歴史を重ねてきているわけです。寿命もどんどん延びてゆくけれど、子どもは段々減っていって、何となく何となく僕らは穏やかな終末を迎える。そうだとしたら、これは何が原因なんだろうなって思ったんです。

―ええ。

で、行き当たったのが、争いなんかを「悪いことです」と思う自分たちの良心、倫理観みたいなもの。もっと言うと信仰心、宗教みたいなもの。今の我々の道徳心って、仏教やキリスト教的な倫理観が何となく道徳の基盤になっていると思います。自分よりも隣人を愛しなさいよとか、罪があっても赦しなさいよとか。そういう自分たちにはすごく当たり前に思える道徳に束縛されて、例えば「とにかく誰とでもいいから子孫をたくさんこさえて繁栄しよう」みたいな能力が自分たちの中からすごい長い年月をかけて薄れていったとしたら、核兵器とかそういうものの発明よりも、本当は神様みたいなものを発明したことのほうが、今になって振り返ると一番恐ろしい発明だったんじゃないのかなと。そういうお話ですね。自分たちを直接滅ぼすのは、実は核とか暴力とかよりも、道徳心かもしれないっていう。

―その考え方が「プロメテウスのばか」という曲に集約さてますよね。で、そういう記録の作品であるんだけど、音楽という芸術作品が人類の滅亡を克服し得るかもしれない……そういうポジティヴなメッセージもどこかで感じたアルバムでした。

確かに、前向きではありますよね。前向きというかこのアルバムは決して悲観的ではないっていうことですよね。

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