小林雅明が論じる「リアリティTVラッパーの象徴的存在、カーディ・Bは本当に新しいのか否か?」

カーディ・B(Photo by Jora Frantzis)

メジャーデビュー曲「Bodak Yellow」ではローリン・ヒル以来19年ぶりに女性ラッパーで複数週連続の全米1位を獲得。さらには、プエルトリコ出身のバッド・バニー、コロンビア出身のJ・バルヴィンと共演したラテン調の「I Like It」も全米1位の座に就いたことによって、〈ビルボード〉史上初めて、複数のNo.1シングルヒットを持つ女性ラッパーという記録も打ち立てた。そう、間違いなくカーディ・Bは、2010年代後半を象徴する風雲児だ。彼女の人気の理由の一つとして挙げられるのは、リアリティTV番組出演やインスタグラムなどを通した巧妙なキャラ作り。その戦略は極めて現代的だが、彼女の音楽性やリリシストとしての実力もまた、時代の先端を行っているのだろうか? 『ミックステープ文化論』などの著作や『ラップ・イヤー・ブック』の翻訳などで知られる小林雅明が論じる。

カーディ・Bが、リアリティTVシリーズ『Love and Hip Hop』に初めて登場したのは、2015年も押し迫った12月21日にVH-1で放映されたシーズン6第2話だった。このシリーズでは「業界内の」あるいは「業界入りを目指し」しのぎを削る女性ラッパーたち(このシーズンには出所直後のレミー・マーも新加入)と彼女らを取り巻く人々の人間模様が切り取られる。番組では、彼女たちの間で別々に進行中の複数の出来事が再現ドラマの要領で個別に描かれる合間に、その時とった言動の理由や本音を、当事者たちが個別に自分の言い分として視聴者に向かって説明する映像が差し込まれてゆく。

この回では、のっけから「What’s Poppin」と、後にお馴染みとなるフレーズでカーディが登場。実際に彼女が踊っていたブルックリンのストリップ・クラブ「クラブ・ラスト」での彼女のポール・ダンスのパフォーマンス、それに、インスタグラムでの動画をまじえ(実際には2013年の時点で)ソーシャルメディアの人気者だと紹介される。彼女の考える次なるステップは、ラッパーとしてのメジャーデビュー。それを実現すべく彼女はどんな行動をとるのか(とったのか)が見どころというわけだ。

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