90年代に「ボヘミアン・ラプソディ」を再び世界で大ヒットさせた映画の裏話

マイヤーズ:僕は名曲を台無しにしやしないかと恐れていた。20代のお人好しカナダ人だった僕は、とにかくあの曲を尊重して、称賛したかったんだ。

ブライアン・メイ(クイーンのギタリスト):マイク・マイヤーズは私に電話してきて、こう言った。「僕たち、こんなアイデアがあって、きっと上手く行くと思うのですが、聞いてみたいですか?」 そこで私は「ああ」と答えたら、彼が「フレディも聞きたいと思いますか?」って。その頃、フレディは病状がかなり悪化していたけど、私は「ああ、彼も聞きたいはずだよ」と返事した。マイクがテープを送ってくれたので、それをフレディに持って行った。フレディはとても気に入っていたよ。ビデオを見て大笑いして、最高だと思ったらしい。実はね、あの曲はクイーンのメンバーもおふざけ曲と見なしていたんだ。ラジオからあの曲が聞こえるたびに、あのヘヴィーなパートが始まると全員でヘドバンしていたのさ。だから、あのシーンはクイーンのユーモア感覚にかなり近いものだったんだ。

マイヤーズ:ブライアン・メイから手紙が届いて、彼もバンドもあのシーンを大いに気に入ったと書いてあった。ブライアンはサイン付きのギターすら僕に送ってよこした。クイーンを溺愛していた僕は正気でいられないほど嬉しかったよ。

スフィーリス:あの頃フレディ・マーキュリーは病気で、映画の公開前に他界してしまったのよね。クイーンが感謝していたと聞いたことがあったわ。あの映画があの歌と彼らを復活させたから。

アダム・ランバート(シンガー):僕がクイーンを知ったきっかけがあの映画だった。イギリスでのクイーンは音楽史の一部だし、アメリカでもとても人気がある。でも僕の世代は、特にあの当時は、クイーンを知る人はほとんどいなかったよ。『ウェインズ・ワールド』は父と兄弟と一緒に観に行ったんだ。その夜は男だけのお出かけって感じで、僕は10歳だった。あのシーンは天才的だよ。当時、クイーンなんて全然知らなかったのに、あの演劇風でおちゃらけた曲が僕の頭の中でガンガン響いていたもの。父に「あれは誰?」と聞いたら、父が「クイーンだよ」って。家に戻ってから父がアルバムを引っ張り出してきて、僕に聞かせてくれた。「うわー、このバンドって僕が好きそうな音楽やってる」と思ったね。

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メイ:あれはアメリカで大ヒットした。あのとき、2つの出来事がほぼ同時に起きたんだ。『ウェインズ・ワールド』の公開とフレディの他界。当時を思い出すと、偶然にしては本当に奇妙なめぐり合わせだし、あれがきっかけでクイーンがアメリカで復活したわけだ。

ランバート:クイーンを発見するのに、僕は奇妙な回り道をしたわけだ。そんな僕が彼らとワールドツアーをしているんだからね。メンバーはそんな状況を面白がっているよ。

ターゲセン:今ではいろんな映画であのシーンをオマージュしているよね。

サリヴァン:あれは、ある意味で完璧なシーンだった。当時はみんなそう思ったんだ。そして時を経て文化的なアイコンにまでなったけど、当時の僕たちはそんな未来などまったく想像していなかった。ただ、あのシーンには大切な何かがあることだけは感じていたけど。

スフィーリス:あれは元気いっぱいな青春を濃縮したシーンよ。あの歳の若者はあの感覚が大好きだと思うし、大人世代も青春を思い出してあの感覚を楽しむし、青春前夜の子どもたちは大きくなったらあんなふうにしてみたいと思うわけ。

サリヴァン:あの映画は大ヒットしたし、あの映画に特別なつながりを見つけて、みんな圧倒されるんだ。つまり、あの年頃の自分があそこに投影されるから「これは俺の映画だ」と思うわけだ。

マイヤーズ:何もかもが本当にシュールに思えた。当時の僕はあの映画が公開されることすら知らなかったし、公開後の反応も想像を遥かに超えていた。仕事人として最高に満足した経験だったよ。

Translated by Miki Nakayama

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