ケイシー・マスグレイヴス、超満員の来日公演で魅せた虹色のエンターテインメント

恵比寿LIQUIDROOMにて開催されたケイシー・マスグレイヴスの来日公演の模様(Photo by @_24young_)

5月20日、ケイシー・マスグレイヴスが東京・恵比寿のリキッドルームにて単独来日公演を開催した。最新アルバム『ゴールデン・アワー』(2018年)が第61回グラミー賞にて「年間最優秀アルバム」を含む4部門で最多受賞を果たした直後のパフォーマンスとあって、チケットは完全ソールドアウト。外国人やLGBTQのオーディエンスも数多く駆け付け、ポジティヴなパワーと笑顔に溢れた当日の模様をレポートする。

まずは、昨年のフジロック・フェスティバル出演時と同じく茶色のスーツで揃えたバック・バンドが登場。そして彼らが作り出すサイケデリックで幻想的な空間に誘い込まれるように主役のケイシーが現れると、オーディエンスからはアイドルを待っていたかのように熱を帯びた歓声が起こった。『ゴールデン・アワー』のオープニングを飾る「スロウ・バーン」でスタートし、序盤はアルバム収録のミドルテンポなナンバーが続いたのだが、シングル・カットされていない曲でさえ大合唱が何度も起こるなど、リリックを何度も読み込んでいた筆者でさえ、ファンのリアクションの温かさに思わず驚いた。

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Photo by @_24young_


この日のライブは、我々がケイシーに熱狂せずにはいられない理由を露わにしてくれたと思う。《私は大丈夫、ゆっくり燃えていけば/私のペースで世界を変えていくの》――「スロウ・バーン」でそう歌うケイシーは終始笑顔を絶やさなかったし、MCでは突然「隣の人とハイ・ファイヴしちゃって!」とオーディエンスに呼びかけるなど、とにかくマイペースだ。その「我が道を行こう」というモットーが歌にも現れた終盤の2曲は、セットリストの中でも特に象徴的だった。

まずは元祖ディスコ・クイーンとして知られるグロリア・ゲイナーが歌い、1978年に大ヒットしたLGBTアンセム「恋のサバイバル」のカバー。ディスコ・ソングといえばケイシーには「ハイ・ホース」があるが、"LGBTアイコン"としての顔も持つケイシーによるこのカバーは、彼女がルーツとするオーガニックなカントリー・ミュージックとの繋がりも感じさせる瞬間だった。

その"LGBTアイコン"となったきっかけの代表曲「フォロー・ユア・アロウ」では、《たくさんの男の子にキスするか/たくさんの女の子にキスするの/それがあなたの夢中になれることなら》というコーラスのラインを観客に歌わせ、会場は自由で解放的なムードでいっぱいになる。アウトサイダーたちをそっと優しく包み込むかのようなケイシーの透き通った歌声と、一語一語を噛みしめるように歌うオーディエンス。その関係性を見ていると、今のケイシーもまた、ビリー・アイリッシュやアリアナ・グランデのように「ファンダム」に寄り添いながら前に進む、大文字の"ポップスター"なのだと確信させられる。

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