逸脱する入稿 『ダークウェブ・アンダーグラウンド』完成までの道程

今回の場合、第一次ラフがほぼそのまま本になったのですが、このように最初から最後まで形が変わらないことは非常に珍しく、通常ラフは変化を繰り返し、デザイナーは幾度となく床に触れます。仕様に関しては、第一希望は予算の関係で門前払い、第二希望は印刷所の設備の関係で却下となり、最終的に第三希望に落ち着きました。我々が生きる金と機械が支配する荒野ではこういったことは珍しくありません。製作中にその他諸々想定外のエラーがいくつかありまして、方便氏が律儀に菓子折りを持って状況報告に来てくれたのですが、その際机の上の手が伸びる位置に先述のガスガンがたくさん並んでいたのでちょっと尋常じゃない怒り方をしている人みたいになってしまったのが印象的でした。あとに引けない雰囲気だったので、いつでもお前を殺せるぞみたいなムードを醸しつつ応対しましたが、かっこいい本ができたので実際のところは立腹ゼロで結果オーライです。

表紙、カバーなどの外回り以外に本文の指定という工程もあるのですが、これに関しては完全に向かい合う深淵と深淵、専門的かつ非常にフェテッシュな分野ですので今回は箱に入れて海に沈めます。指定の一部を貼っておきますので、なんかいろいろやってる人がいるなくらいに思っておいてもらえると幸いです。〈図案2〉


〈図案2〉

飛び交う膨大な修正指示と少しの余談、編集者と幾度となくやり取りを繰り返し、スムースな本文を仕上げ、マグネティックな帯をロックする。そういった作業の後、印刷所から出てきた校正紙に「校了」とハンコを押し印刷見本が完成、本は量産され流通に乗り書店に並びます。〈図案3、4〉


〈図案3〉


〈図案4〉

突然出題される大喜利に常に答え続け、及第点を出し続けると出題ペースがアップ、振り落とされた者は発火したマグネシウムのように刹那の美しい残像となり、外しが目立つと出題が減り、やがてひっそりと咲く路傍の花になるという陽炎のような職業、それがデザイナーです。ストラグル・フォー・プライド、ステイ・アングリー、そしていつだって常にドゥ・ザ・ライト・シング。次号の書き出しは「念願叶って私のコーナーも1ページとなりました」となる予定です。


『ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』
木澤 佐登志
発売中/出版社:イースト・プレス
インターネットや思想といった分野を中心に、ブロガー、文筆家として活動する木澤佐登志による初の単著。暗号化された電脳空間「ダークウェブ」における、不道徳な人間の所業が描かれるノンフィクション。

森 敬太
京都府生まれ、デザイナー/アートディレクター。コミック、CDなどの装丁を多数手がけながら、2011年から自主制作漫画レーベル「ジオラマブックス」を主宰、漫画誌「ユースカ」を発行。2017年、合同会社飛ぶ教室を設立する。
Instagram : @m_o0_ri

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