関わる楽曲すべてメガヒット 現代最強のバイラルブースター、ジャスティン・ビーバーの威力を柴那典が解説

ジャスティン・ビーバー(Courtesy of UNIVERSAL MUSIC)

2010年代後半のラテンブームの火付け役となったダディ・ヤンキー&ルイス・フォンシの「デスパシート」。スペイン語圏を超え、これを全米16週1位という特大ヒットに押し上げた影の立役者がジャスティン・ビーバーだ。思い返してみれば、カーリー・レイ・ジェプセンもPSYもピコ太郎も、ジャスティンのアシストによって大ヒットの足掛かりをつかんでいる。アイドル? 今やジャスティンは最強のバイラルブースターだ。その眼力の鋭さとアイドルからの転身の契機を、音楽ジャーナリストの柴那典が解説する。

ジャスティン・ビーバーは単なるポップスターではない。彼のパワーの源泉は世界最強の“バイラルブースター”であり続けてきたことにある。

トップクラスのSNSフォロワー数を持つジャスティン。しかしケイティー・ペリーなど彼以上もしくは同レベルのフォロワー数を持つアーティストやセレブリティと比べても「ジャスティン・ビーバーが火をつけた/乗っかった社会現象的なヒット」の多さは際立っている。カーリー・レイ・ジェプセンの「コール・ミー・メイビー」も、PSYの「カンナム・スタイル」も、ピコ太郎の「PPAP」もそうだった。「誰もが15分以内に有名人になれる」というアンディ・ウォーホルの予言を形にし、インフルエンサーとして誰かをスターダムに引っ張り上げることによって彼自身もスターであり続けてきた。もちろん、そこには彼やアリアナ・グランデのマネージメントを手掛ける「2010年代ポップシーン最強の仕掛け人」スクーター・ブラウンの存在も大きい。

「デスパシート」の世界的なヒットにも同じ力学がある。ただし、この曲が他の例と大きく異なるのは、ルイス・フォンシもダディ・ヤンキーも無名にはほど遠く、むしろ既にトップアーティストの一人だった、ということ。

ルイス・フォンシは2014年のアルバム『8』が世界9カ国で1位を獲得しラテン・グラミーもたびたび獲得しているラテン・ポップの代表的アーティスト。同郷プエルトリコ出身のダディ・ヤンキーは、世界的なレゲトン・ブームを巻き起こした2004年の「ガソリーナ」で知られる「キング・オブ・レゲトン」。ルイス・フォンシfeat. ダディ・ヤンキー名義で2017年1月に発表された「デスパシート」は、両者のコラボという話題性や楽曲の魅力もあって、リリース直後からスペイン語圏で急速に支持を集めていた。南米各地のクラブでプレイされ、サッカーチャントとしても広まりつつあった。

そして同年4月10日、南米ツアー中のジャスティン・ビーバーはコロンビアのクラブでこの曲を耳にする。翌11日、スクーター・ブラウンはルイス・フォンシ側に連絡し、ジャスティンがスペイン語で歌い参加するバージョンの制作を提案し許諾を得る。そこからわずか6日でレコーディングが完了し、プエルトリコ公演前日の4月17日に楽曲はリリース。結果、このリミックス・バージョンは16週連続全米1位。21世紀最大のラテン・ヒットとなったわけだが、その背景として、スペイン語圏の音楽市場の広がりや世界的な影響力の増大だけでなく、バイラルのスピード感を乗りこなすジャスティンとスクーター・ブラウンの意思決定の異常な速さがあったことは指摘しておきたい。

Luis Fonsi, Daddy Yankee - Despacito (Remix) (Official Audio) ft. Justin Bieber



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