世界最低の毒舌ラジオDJ、ハワード・スターンが「成熟」できた理由

撮影中のハワード・スターン(Photo by Joe Rodriguez for Rolling Stone)

かつて世界最低の毒舌ラジオDJと言われたスターンだが、最近はずいぶん丸くなり、以前よりも思慮深く、成熟した司会者となった。朝の番組ではポール・マッカートニーやジェリー・サインフェルド、ジェイ・Zといったスターとの腹を割ったトークを中心に展開している。スターンはこうした変化を心理セラピーのおかげだと言った。

「俺はとんでもないアホだったよ。セラピーではいろんなことを学んだ……いま誰かに『おい、今のあんたはつまんねぇよ』って言われても、『そうかい、あんにとってはそうかもな。だけど俺は今の番組のほうがずっと好きだぜ』って言い返せる。これが今の俺さ。人間として成熟すると、こういうことも言えるようになるんだな。まったく、生まれ変われてありがたいぜ」とローリングストーン誌の最新号の巻頭インタビューで彼は話している。

4度目となる弊誌との特集インタビューまであと数週間と迫ったある日、ハワード・スターンは番組のリスナーに、実は緊張しているんだと言った。インタビューではなく、写真撮影にだ。SiriusXMの朝の番組の中で、オンエア中に堂々と不安を吐露した。「ああ、なんてこった」と、4月15日の放送で溜息交じりに言った。「自分の見てくれが嫌いなんだよ」。65歳ながらいまだ少年のような――おどおどした様子、シャープな顔立ち、そして豊かな巻き毛――スターンは、実はカメラを向けられるのが苦手なのだ。「しゃべることなら10時間でも平気なんだが」と、弊誌のアンディ・グリーン記者に語った。「だけど表紙の撮影となると、ガチガチに緊張する」

そこへ猫が迷い込んできた。正確には小猫だ。屋根裏で発見され、スターンと妻のベス・オストロスキーが里親として世話している真っ黒な2匹の小猫を、ベスがこっそり撮影現場に連れてきたのだ。夫妻はこれまで1000匹以上もの猫を世話してきた(一度に25匹ずつ)。ニューヨークのノースショア・アニマル・リーグの後援者でもある。「俺の人生で一番大事なんだ」とスターン。「茂みの中に入って行って、捨て猫を助け出すんだ。家でも妊娠中の母猫を2匹飼っている。ストレスがたまると、妻と一緒に動物の世話をしに行くんだ。バカみたいだけど、すごくいい。ここ数年、俺の人生の生き甲斐みたいになっている」


ローリングストーンUS版1328号の表紙(Photo by Alexei Hay. Grooming by Toni Coburn. Styling by Ralph Cirella. Shirt and jacket by John Varvatos)

インタビュアーのアンディ・グリーンは中学から高校までスターンの番組を毎回欠かさず聞いて育った。グリーンにとって、このインタビューは夢のような仕事だった。「僕にとって、青春時代のバイブルはハワード・スターンとローリングストーンでした。だから今回は、僕にとって大事件でしたよ」

「めちゃめちゃ緊張しましたね」とグリーンはさらに続けた。音楽に関しては百科事典なみの知識を持ち、2005年以来、ローリングストーン誌でも指折りの敏腕記者だ。「でも彼が部屋に入ってきた瞬間、すごく気さくで優しくて、ラジオの気難しい粗野な感じは微塵も感じませんでした。インタビューでは彼が教えてくれたことをいくつか実践しましたよ――相手が脱線した時に、どうやって口をはさんで話題を変えるかとかね。彼はノリノリでした。最後に彼は、素晴らしいインタビュアーだと言ってくれました。最高の褒め言葉でしたよ。なにしろ、ハワード本人の口から褒めてもらえたんですから」

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE