さようなら、そして、ありがとうiTunesーー音楽をデジタル時代へと牽引したAppleの功績

2004年:iTunesとPepsiで音楽を守ろうとしたグリーン・デイ

すべてのプロモーション活動が成功したわけではない。2004年にAppleとPepsiはタッグを組み、グリーン・デイによる「I Fought the Law」のカバーとともにスーパーボウルの合間に放送される著作権侵害対策のテレビCMを制作した。莫大な費用がかかったにも関わらず大失敗に終わったこのCMは、失敗したプロモーション活動の代表例だ。違法ダウンロードで訴えられたと思しきティーンエイジャーたちをフィーチャーしたCMは、AppleとPepsiがiTunesを通じて1億曲を無償提供する、と謳った。音楽をダウンロードするための無償コード番号入りのPepsiボトルが予定していたほど広く流通しなかったことも、ただでさえ評判の悪いCMの不人気に拍車をかけた要因のひとつだ。両社が掲げた1億曲のうち、実際ダウンロードされたのはたった500万曲だった。「もっと多くの人がダウンロードすることを期待していました」と当時Appleのコミュニケーション部門の部長を務めていたケイティ・コットン氏はこのように認めた。



2010年:iTunes Pingという名の悪夢

iTunesユーザーは長きにわたって飽和状態のソフトウェアに対して不平をこぼし続けてきた。Appleは、短命に終わった同社のソーシャルネットワークのiTunes Pingに限ってユーザーたちの願いを聞き入れた。同社は、iTunesユーザーがお気に入りのアーティストや音楽を分かち合える場として2010年にiTunes Pingをリリースしたものの、結果的には、人気よりも嘲笑の対象となってしまった。「お客様から『iTunes Pingにたくさんのエネルギーを注ぎたいとは思わない』という意見をいただきました」と同社のCEOを務めるティム・クック氏は2012年に認めている。



2011年:待ちに待ったビートルズの登場

2011年、AppleとiTunesはビートルズの楽曲という史上最大の勝利を手に入れた。何年にもわたってiTunesへの楽曲提供を差し控えていたビートルズが、iTunes Storeを通じて自身のレコード会社と出版社に直接ロイヤルティが支払われる、という条件のもと(業界関係者によると、この条件は音楽史上もっとも儲かる条件らしい)、ようやく音楽配信にゴーサインを出したのだ。ビートルズの解禁とともに、当時同じように楽曲提供を保留していたレッド・ツェッペリン、キッド・ロック、メタリカ、AC/DCなどの楽曲も解禁され、iTunesというビジネスモデルの確実性が証明された(少なくとも、Spotifyをはじめとするストリーミングプラットフォームという新たな黒船が出現するまでは)。

Translated by Shoko Natori

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