同性愛差別の動画投稿者に対するYouTubeの対応、是か否か?

スティーヴン・クラウダー氏が自分を標的にした同性愛差別の動画を投稿したとして、カルロス・マザ氏(写真)がYouTubeに抗議。だがYouTubeはクラウダー氏を収益化停止にしたのみ。(©︎Vox/Youtube)

この数年、YouTubeは暴力的または嫌がらせ目的のコンテンツのチェックが行き届いていないとして厳しい批判を受けてきた。その一方プラットフォーム上では、人種差別的、女性差別的、陰謀論的な意見を主張するコンテンツがはびこっていた。

その後、YouTubeも、有害な自閉症の「治療」や様々な類の陰謀論を吹聴するコンテンツを禁じるなどいくつか是正措置を講じてはいるものの、大方の人々が、YouTubeは間違った方向へ向かっていると主張している。ゲイのジャーナリストに嫌がらせをして糾弾されている右翼の動画投稿者に対し、YouTubeはとくに何もしないと発表したからだ。

現地時間4日、人気ユーチューバーでVoxシリーズ『Strikethrough』の司会を務めるカルロス・マザ氏からの再三の抗議に対し、YouTubeはTwitterで正式に回答した。マザ氏は先週、極右ブロガーのスティーヴン・クラウダー氏が作成したモンタージュ映像を投稿。動画は「カマトトぶったクイア」「ちびのクイア」「Voxのオネエ」など、人種差別的、同性愛差別的な文言でマザ氏を揶揄していた。マザ氏は一連のツイートで、クラウダー氏が何年間も自分に対して嫌がらせをし、仲間たちにも賛同するよう呼びかけていたと訴え、さらに「InstagramやTwitter上には同性愛/人種差別の壁」があるとも述べた。

マザ氏の抗議に対するYouTubeのツイートは、「ハラスメントの通報を非常に重く」受け止めてはいるものの、「投稿された動画は同社の規約に違反していない」ため、クラウダー氏に対する措置をとることはないというものだった。

「最近では、お笑いと残虐行為の境界線は紙一重です。でもたとえジョークのベールに包んだとしても、それはやはりハラスメントなのです」。LGBTQの動画投稿者として絶大な人気を集め、550万人のフォロワーを抱えるコナー・フランタ氏はローリングストーン誌の取材にこう答えた。「YouTubeには明確なネットいじめ禁止規約があります。もし誰かが明らかに規約違反を犯したのなら、必ず手を打つべきです。スティーヴン・クラウダー氏の憎悪に満ちた偏見がとくにマイノリティの人々を狙ったものであることは、本人も折に触れて認めています。こんなのは間違っている。あるまじきことです」

他の人気LGBTQユーチューバーも、マザ氏を支援するツイートを投稿。740万人以上のファンを抱えるユーチューバー、タイラー・オークレー氏もその1人だ

マザ氏がローリングストーン誌の取材で語ったところでは、マイノリティのユーチューバーからも――LGBTQに限らず、有色人種や女性のクリエイターなど――YouTube上のハラスメントを通報した後でやはり同じような目に遭ったという話を聞いたそうだ。また彼も指摘しているように、今回YouTubeがクラウダー氏に何の手も打たなかったのは、皮肉にもゲイ・プライド月間だった。YouTubeはLGBTQコンテンツのクリエイターで儲けているくせに、彼らを利用してさもLGBTQフレンドリーなプラットフォームだと見せかけ、実は同性愛ハラスメントには目をつむっていると、マザ氏は批判した。

「今回の出来事はひどい話ですが、その背景にはもっと大きな問題があります」と彼は言う。「そもそも、YouTubeが反ハラスメント規約を行使したことなどまったくないんです。マイノリティの人々はこの結果を甘んじて受け入れるほかない。しかもゲイ・プライド月間だということを考えれば、今回の出来事はひどい怠慢です」

まったくその通り。LGBTQハラスメント対策が不十分だとしてYouTubeが批判を受けたのは今回が初めてではない。ユーチューバーのナタリー・ウィン氏、通称Contrapointsもローリングストーン誌の取材に対し、YouTubeの今回の決定は、ここ何年もLGBTQユーチューバーが受けてきた仕打ちと「まったく同じ」だと述べた。多くの著名なLGBTQユーチューバーが、YouTubeから収益化停止をくらうか、年齢制限をかけられたとして抗議している。近いところでは、トランスジェンダーのコンテンツクリエイターであるチェイス・ロス氏が昨年、動画のタイトルに「トランス」「トランスジェンダー」という単語を含んでいるために、YouTubeから収益化資格を停止されたと主張。一部の動画は、LGBTQ反対派の広告付きで再生されたという(こうした抗議に対してYouTubeは、「トランス」「トランスジェンダー」というキーワードが収益資格停止の引き金になったわけではないとしたうえで、今後中傷的な広告に関する規約の改善に努めると約束した)。

「そもそも、これはYouTubeがアダルトコンテンツに対する予防措置として導入したものです」とウィン氏。「ですが、『レズビアン』とか『トランスジェンダー』がアダルトとみなされ、私たちは実質的に収益化サービスから閉め出されてしまっています」

Translated by Akiko Kato

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