サンタナを救った一曲、低迷期に大ヒットが誕生した感動秘話

トーマス:イタールは俺の家から1,2ブロックぐらいの距離に住んでいたから、彼の家で一緒に曲を作りを進めないかって提案されたんだ。イタールの家に行ったけど、Bメロが俺にとってはサビのつもりだったからまだサビがなくて。だから、俺たちにはさらに勢いあるパートが必要だったから後にサビとなるパートを作り出したんだ。間違いなくイタールのサポートは必要だったよ。俺たちにはより大きなもの、カルロスっぽいものが必要だったんだ。想像力を働かせると海とか月が頭に浮かんできた。それで「もしこの人生が良くないというなら」のパートがBメロになり「まるで月に照らされた海のようだ」がサビになったんだ。

シャー:ロブはAメロ、Bメロのアイデアを持って私のところに来て、私は新しいサビを考えていた。(歌詞を変えることになってから)ピートが言っていたことはすべて正しかったと感じていたから、完璧なものになるまで私たちは試行錯誤を続けた。ある時、私が「なぜ『(スペイン語で)お嬢さん』とか『スペインのモナ・リザ』を歌っているんだい?」と聞いたら、ロブは「俺のガールフレンドはプエルトリコ人なんだ」と言って、私は「なるほど。インスピレーションを受けたよ」と言ったんだ。

ガンバーグ:私は、ロブが歌ってくれた時にはなかった新しいサビのパートが入った新しいデモを聞いた。サビのメロディーはすごく良かったが歌詞の始めの2行が「俺を動かすような素敵なものをくれよ/君のところに行けるように俺のエンジンをかけてくれよ」だった。私はエヴァンに電話して「サビ自体はいける。メロディーはすごくいい。でも最初の2行…。これはなんだ。『ワイルドでいこう!』か?」と言った。ロブは「俺はイタールにここの2行を書いてほしいと思ったんだ。これは彼の曲だから。この曲は彼から始まったわけだからね」と言ったが、私は「ロブ、君はこの2行に何かアイデアはあったのか?」って聞いたら、彼は「あるよ。俺のは『まるで月に照らされた海のようだ/俺が君から得る感情と同じなんだ』だ」と言うので、私は「ロブ、イタールには自分から話すかい?それとも私が言おうか?」と言ったんだ。

トーマス:それでデモを録って先に進み始めた。

3. “最終的に”合意するサンタナ

企画された当初からサンタナとトーマスのコラボレーションはほとんどの人に違和感を持たせた。サンタナ自身も含めて。

ガンバーグ:こんなことが起こっている間もカルロス自身はそんなことが起こっているとは知るよしもなかった。それは私とエヴァン・ランバーグとロブ・トーマスとイタール・シャーで小さな研究所で自分たちのファースト・シングルを生み出そうと画策しているようなものだった。そして、ついに合格点のデモが完成し、私はクライヴにそのデモを聞かせに行った。曲が全部終わるまでの3分半、私は息をすることができなかった。クライヴが「ダメだ。良くない」と言う可能性は大いにあったからね。そうなったらすべてが終わりだった。クライヴがボスだからね。でも、クライヴは「気に入ったよ。カルロスはなんて言ってるんだ?」と言い、私は「カルロスにはまだ聞かせていない。あなたが気にいるまでカルロスには聞かせたくなかったので」と答えた。すると彼は「気に入ったよ。だからカルロスに送るんだ」と言ったんだ。

私は息をつき、自分を褒めたい気持ちになった。カルロスにデモを送ると翌日、彼のマネージャーから電話があった。「すまない、ピート。カルロスはあの曲が気に入らないようだ」と言われ、「冗談だろ?」と言うと、彼は「本当だ。彼はあの曲は好きじゃないと言っている。『グアヒーラ』(1997年の『サンタナIII』収録曲)みたいだからまた『グアヒーラ』をやるのは嫌だと」と答えた。私が「違う、これはヒット曲になるから。彼にもう1度曲を聞いてくれるようにお願いしてくれないか?」と言うとマネージャーは「わかった。もう1度曲を聞くように言ってみるよ」と言ってくれた。めまいがしたよ。それ以上何をしたらいいかわからなかった。もしアーティストが曲を気に入らなかったらそのレコーディングを強要することはできないからね。



ロドニー・ホームズ(当時のサンタナのドラマー):カルロスは昔のサンタナっぽくないことをやろうとしていたんだ。ヒップホップとか彼にとって新しい音楽に挑戦しようとしていたから「マリア・マリア」はすごく気に入っていたけど「スムース」はあまり好きじゃなさそうな感じだったね。

サンタナ:料理をする時、途中の味見だけでは最終的な味はわからないだろ?だから、それと同じで俺は確信が持てなかっただけなんだ。初めて聞いた時はデモだったからその良さを感じられなかったんだ。

Translated by Takayuki Matsumoto

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