モー娘。ライブの舞台裏 YOSHIKO先生が語る演出とパフォーマンスの関係性

ーコンサート中、セットの階段の上り下りも実は大変なんじゃないかと思うんですが。

YOSHIKO 確かにセットはどうしても階段が多いものになるので、メンバーの負担になるんですよ。ブーツで上り下りするので、階段の上に立つポジションになった子は動きにも支障が出てしまう。だから、演出の方とセットを作ってくださるステージプランナーの方とアイデアのすり合わせをしてます。

ー階段はヒヤヒヤしますよね。メンバーは下を見ないし。

YOSHIKO なるべく見ないで欲しいっていうのもあるんですけど。毎回、セット案は何パターンかあって、「このセットだとステージング的にはどう?」って意見を求められるんですよ。それで、「前のスペースを広く」とか、「なるべく大人数が踊りやすいように」っていうお願いをしてます。でも、「階段の幅をもうちょっと広くできませんか?」って相談をすると、「そうするとステージが狭くなるよ」って言われたり。だから、どっちを取るかなんですよね。

ー階段の幅や高さに関する攻防があるんですね。

YOSHIKO 階段の高さって23センチから24センチが平均だと思うんですけど、モーニングの場合は20センチなんですよ。通常より5センチでも余裕があるととても安心感がある。だから、高さを低くして幅を広くすると楽なんだけど、そうするとステージが狭くなる。階段はいつもネックになりますね。

ー先ほど、「団結力の高さ」という話が出ましたけど、そういうものを感じさせた印象的な出来事はありますか?

YOSHIKO ある公演で昼公演は大丈夫だったけど、夜は最後までやりきる自信がないって言ってるメンバーがいたんです。その子はその時期ずっと調子が悪かったから、私も「ダメだったら(ステージ袖に)はけていいよ」って言ってたぐらいで。そうしたら、頭のブロック3曲が終わった後のシーンで、その子はやっぱりはけたんですね。すごかったのはその後の他のメンバーの対応力! メンバーもその子がはけるかもしれないっていうのはわかってたから、実際にいなくなったときにすぐ察知して、歌割をどうするか譜久村と小田が本番の最中にステージ上で「1番は私で2番は……」って打ち合わせしてたんですよ。

ーそれはすごい!

YOSHIKO それもお客さんには絶対にわからないやり方で。曲中、2人が近くに寄るシーンで「あそこはこうね……」みたいな感じで確認し合って、すぐに離れるっていう。今、歌割は譜久村、小田、佐藤の3人がわりと多くて、譜久村と小田は機転が利くから「抜けたところは私たちが代わりに歌おう」って最後までカバーしたんです。

ーとんでもないですね。

YOSHIKO あと、ポジションに関してもみんなが空気を読んで、「あ、ここはあの子がいないところだ」って気づいたらちょっと寄ったりして、抜けた場所がなるべくブサイクに見えないようにしてたんです。だからその日は、「今日のみんなは素晴らしかった! さすがモーニング娘。です!」ってベタ褒めしました。メンバーは「そうでしょう?」みたいな感じでしたけどね(笑)。あはは! あのアクシデントを乗り越えたことで、「これは確実に’17を超えたな」って思いました。

ーそういうふうに言葉にならないやり取りがステージ上で無数に交わされてるんですね。

YOSHIKO コンサート後に、「今日のあれ、面白かった」とか、「あれはダメだよ」って言い合えるっていうことは、メンバーが常にお互いを見てるっていうことだと思うんですよ。そのときは本当にすごいと思いました。

ー素晴らしいエピソードですね。

YOSHIKO あと、去年は「ファラオの墓」っていう舞台をやったことで、表情の作り方とかを含めた表現力が身につきましたね。去年は春ツアーの間に舞台のリハーサルをやってたので、男役を演じてた石田と野中がツアーの本番中にものすごいガニ股で歩いてたっていうこともありました(笑)。「今日、2人とも男になってたよ」「あ!ヤバい!」って(笑)。「本当に役になりきってるんだな!」って思いました。

ー今後、メンバーに身につけてもらいたいことはありますか?

YOSHIKO 道重が卒業した後は彼女のパワーのすごさを改めて感じたし、「武道館なんてまだ早いわ!」って思ったぐらい頼りないメンバーだったんですけど、そこからの「みんなで頑張ろう!」っていう団結力によってどんどん武道館のライブが似合うようになっていって、こないだの武道館で初めてあの会場を狭く感じたんです。だから、次はアリーナクラスでツアーができるようになってほしいってすごく思ってます。あとは、グループでのパワーは凄いから、一人ずつになったときにも「あ、モーニング娘。の誰々だ!」みたいなパワーをそれぞれ出せるようになるといいですね。


振り付けを考える際に使用しているノート。これを元にコンサートでの立ち位置なども考えているそう。


YOSHIKO
広島県出身。「フォーメーションダンス」の生みの親。モーニング娘。’19以外のハロー!プロジェクト系グループの振付も担当している。






<INFORMATION>

「人生Blues / 青春Night」
モーニング娘。’19
アップフロントワークス
発売中

初回限定盤A


初回限定盤B


RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE