巨匠コッポラが語る『地獄の黙示録』とスマホ開発、ワインビジネスの話

フランシス・フォード・コッポラ(llustration by Mark Summer for Rolling Stone)

ローリングストーン誌の企画「最後の言葉」シリーズ。映画監督のフランシス・フォード・コッポラはマーロン・ブランドが彼のヒーローのひとりだった理由、自身がスマートフォンを開発する一歩手前まで行った経緯、『地獄の黙示録』がどのように役立って彼が世界トップクラスのワイン製造者になったかなど、オープンに語ってくれた。

―成功のメリットとデメリットを教えてください。

成功の最悪の側面なら教えられる。それは失敗と成功を切り離そうとすることだ。

―それは具体的にどういうことですか?

つまりだ、これは「明」と「暗」について語ろうとするのと同じだよ。私にとって両者は一枚のコインの裏と表だ。失敗は成功不在ではない。失敗は成功へのステップだ。これは古代へ遡るよ。「おい、あのサイを殺しに行こうぜ。まあ、前回はやつを仕留められなかったけど、どうすればいいか分かったから、今後はひもじい思いはしないで済むぞ」ということだ。

―サイですか?

最初に浮かんだのがサイだった。とにかく、失敗は建設的なことだと私は考えているのだよ。

―当初『地獄の黙示録』は失敗作と言われていました。今ではクラシック作品とまで言われています。

昨日のアバンギャルドは今日の壁紙のデザインってことだ。その道の達人と呼ばれるアーティストたちの中には無名の人もたくさんいる。しかし、生前は手押し車で自作の絵画を届けていたヴァンゴッホやルソーの「失敗作」だって、現代の人々は是が非でも手に入れたいと思うだろう。



―あなたのヒーローは誰ですか?

マーロン・ブランドだ。彼はシロアリについて、アメリカに最初に来た中国人移民について、短波ラジオの仕組みについてなど、何時間でも話すことができた。彼は何でも理解したいという素晴らしく貪欲な欲求を持っていたね。それにベル研究所で働いていた人たちや60年代後半の主要な技術向上についても長々と語ったものだ。

―技術に関していえば、スマートフォンの初期プロトタイプの開発に携わったんですよね?

ソニーの盛田(昭夫)さんと仲が良かったので、バルサ材、イギリス製のベータ版コンピュータ、録音機械で自作した装置を見せながら彼にこう告げたんだ。「未来の車はこうなるよ。今は何か欲しいものがあれば、車を運転して買いに行かないといけない。でも未来は、ポケットに手を入れて、そこからオーダーできるようになる」とね。そこで、彼は私をソニーの電話部門に送った。そこで、彼らはまだアレクサンダー・グラハム・ベルの時代から抜け出せていないことに即座に気付いたよ。だから彼らのために自分で作った小さな装置の説明をした。これは基本的に現在のスマートフォンの原型のようなものだったが、彼らの反応は「いいや、要らない、興味ないね」だったね。

―これまでで最良のアドバイスは何ですか?

フレッド・アステアが以前私に教えてくれたのだが、フレッド・アステア・ダンス・スタジオの名前を商標登録しなかったことを、彼はものすごく後悔していた。そのせいで、大嫌いなダンス・スタジオが「フレッド・アステア」という名前を使うのを見続け、その光景に悩まされていたのさ。彼は「自分の名前は絶対に放棄するな」と私に言ったよ。自分の名前が何かに表示されるなら、それは個人的に気に入っているワインのボトル、好きな食品のパッケージ、お気に入りの場所の看板などがいいわけだよ。自分の名前は自分が所有する特別な言葉だからね。

Translated by Miki Nakayama

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