みのミュージックを構成する「ロック」とは? 動画クリエイターとしての源流を探る

動画クリエイター「みの」(Photo by Takanori Kuroda)

YouTubeという映像メディアを使い、ロックンロールの真髄をティーンエイジャーに伝導する動画クリエイター「みの」をご存知だろうか。

今年1月に惜しまれつつも解散を発表した動画クリエイタートリオ「カリスマブラザーズ」の発起人であり、現在は自身のバンド「ミノタウロス」の音源制作と、YouTube番組『みのミュージック』の更新、さらには音楽イベント『ミノロック』の主催など多岐にわたる活動を展開している彼は、まるで70年代のグラムロックバンドから現代へとタイムスリップしてきたかのような奇抜な風貌と人懐っこいキャラクター、そして無尽蔵な音楽知識により着実にファンベースを拡大し続け、GLIM SPANKYの亀本寛貴ら多くのミュージシャンからも熱い支持を集めている。

ビートルズやフィル・スペクターなど、主に60〜70年代のロック〜ポップレジェンドをこよなく愛し、映画や文学への造詣も深い、みの。ある意味では畑違いともいえるような分野へ果敢に飛び込んでいく、彼のモチベーションは一体どこにあるのだろうか。

「動画クリエイターとして、24歳は決して若くないけど『今、勝負しなきゃ一生後悔する』と思った」

─みのさんは、もともとどんな経緯で動画クリエイターになったのでしょうか。

みの:YouTubeでの活動を始めたのは、僕が24歳の時でした。それまではブルースバーでギターを弾いているような、いわゆる売れないミュージシャンでしたね。基本的に主軸は音楽コミュニティにあったんですけど、ずっとWEB界隈も気になっていて。

それこそ2ちゃんねるからはじまり、ニコニコ動画やYouTubeなどを追ってきた世代でもあるので、たとえばHIKAKINさんらの活躍を経てようやく日本人も、顔出しでSNSをやるようになってきたなと感じていました。ただ、音楽をやっている身としては、そっちに寄せるのはナンパな行為じゃないかという固定観念があったんです。今考えると恥ずかしい話なんですけど。

・自宅とスタジオのルームツアー



─そういった思いがあった時期もあったのですね。

みの:はい。でも、そんな時期に、うちの事務所の先輩でもあるPDSくんが、YouTubeでオリジナルソングを配信しているのを見て。それがほとんどコミックソングのような内容なんですけど、100万再生とか出しているんですよ。当時の僕は、メンバーみんなで頑張ってレコーディングしたバンドの楽曲を上げてもせいぜい300再生とかそんな感じで。「誰も俺のこと興味ないのか……」と、ミュージシャンとして負けた気がしたんです。

─活動の場をブルースバーからインターネットへと移した大きなきっかけだったと。

みの:「僅かなチップのために、ブルースのスタンダードを弾いて終わる人生でいいのか?」と。動画クリエイターとして、24歳は決して若くないけど「今、勝負しなきゃ一生後悔する」と思ったんですよね。それで、自分の周りで最もギラギラしていた仲間に「一発当てようぜ」と声をかけたんです。そういう意味では打算的なところは正直ありましたね。

─それがカリスマブラザーズ(通称:カリブラ)だったんですよね。その時は、どのような気持ちでコンテンツを作っていたのですか?

みの:個人的にはジャブを打っているつもりでした。僕は当初、裏方として参加し楽曲提供をするというようなスタンスで、YouTubeチャンネル、フリー音源ではなくオリジナルのBGMを乗せたらどんな反応があるのかな? みたいなことを試していました。

当時YouTube用に音楽制作をしていたのは、わりと新しい試みではあったんですが、視聴者さんからしてみれば、結構どうでもいいというか、「幅のひとつ」くらいの認識でしかない現実にも気づき始めて。もちろん、カリブラはカリブラとして懸命にやっていましたが、それと並行して「クラシックロックを世に広める」というのは、ずっと自分の中のテーマでもありました。

─そもそも、現在28歳のみのさんが、ご自身の生まれる前のクラシックロックに興味を持つようになったきっかけはどういうものだったのでしょうか。

みの:中1の時から本格的に音楽を聴き始めました。両親とも音楽が好きで、家で父がギターを弾いているような環境だったんですけど、いかせんCDが10枚程度しかなくて。そのうちの3枚をピックアップして、自分の部屋で聴き始めたのが自分の原体験としてあるんです。

─その3枚というのは?

みの:ビートルズの赤盤(初期曲を集めたベストアルバム『The Beatles / 1962-1966』の通称)と青盤(中後期曲を集めたベストアルバム『The Beatles / 1967-1970』の通称)、それからglobeのベスト盤。全然違うじゃないですか(笑)。その3枚を並べて聴いた時、しっくりきたのがビートルズ、しかも赤盤だったんですよね。そこからしばらくの間、ビートルズしか聴かない状況が続きましたね。気づけば通学バスの行き帰りで、ビートルズを聴きながら『ゲゲゲの鬼太郎』を読む中学生でした。

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