HYDEが語る「残された時間」と「最後の挑戦」

タガが外れてより自由な発想に

ー「MAD QUALIA」以前の4曲は昨年のライブツアーでも先行披露されていましたけど、この曲を5枚目のシングルに選んだ理由は?

HYDE 先にタイアップ(アクションゲーム『デビル メイ クライ 5』イメージソング)が決まっていたんですけど、ライブで盛り上がって『デビル メイ クライ』にもハマる曲というのを決め打ちで作っていきました。

ータイトルにある〈QUALIA〉という単語はあまり耳慣れない言葉ですよね。

HYDE そうですよね。要は、みんなが見ている色は本当に同じ色なのか……?ここで僕たちが見ている青は青と認識できるけど、あなたが見ている青は、僕にとっては赤かも知れない。実はその違いって目を交換でもしないかぎり証明しようがないじゃないですか。それが〈QUALIA〉という言葉なんです。一方で、ずっと2人で口論していると「自分がおかしいのかな?」とか、どっちが正しいかわからなくなることもありますよね。僕は正当だと思って言ってるけど、ひょっとして自分の頭がおかしいから向こうは必死になって言ってるのかな?とか、誰も証明しようがない、その発想が面白いと思って、歌詞にしようと考えたんです。

ーそこから『デビル メイ クライ』の世界観にリンクさせたと。そういうタイアップならではの楽曲作りは、普段の楽曲制作とは違った面白みがあるものなんでしょうか?

HYDE 僕、そういうのが好きなんですよ。映画の主題歌とか頼まれると燃えるタイプ(笑)。自分も映画の監督になった気分になって、「この映画を盛り上げるには、どういう曲がいいだろう?」とか一生懸命考えるんです。これはよく思うことなんですけど、ただタイアップしただけで、その対象と全然関係ない曲が使われたりもするじゃないですか。そういうのがものすごくショボいと思ってしまって(笑)。なので、やるからには相乗効果を狙えるような曲であってほしいなと思いながら作るようにしています。

ーその曲を聴くと、映画の場面が自然と思い浮かぶものも多いですよね。それこそエアロスミスの「I Don’t Want To Miss A Thing」(映画『アルマゲドン』主題歌)なんてまさにそうですし。

HYDE そうそう、そういうことです。そういう曲が作りたいんです。

ーこの曲の作詞・作曲には、MY FIRST STORYのShoさんやMONORALのAliさんの名前が共作者としてクレジットされています。昨年からのシングルはすべてこういった手法で楽曲が生まれているようですが、なぜこういう手法になったんでしょう?

HYDE きっかけはどうだったかな? VAMPSのときもドイツのラムシュタインのメンバー(リヒャルト・Z・クルスペ)に曲(「RISE OR DIE」)を提供してもらって、それをまたこっちでアレンジしたりもしていたんです。その頃から自分の価値観が変わったというか、「あ、この方法が実はアメリカでは普通なんだ」と気づいたんです。それ以前の僕は、やっぱりバンドっていうのは自分で曲を作って自分でその曲を演奏しないといけない決まりがあると思っていたので、日本のEXILEとか見ていて好きな曲を優秀なライターから集めて選ぶのってすごく賢いな、自分はバンドマンだからそれはできないと残念に思っていたんです。

ーそういう気づきがあったと。

HYDE はい。まあ僕が気が付いたのがちょっと遅いぐらいだったのかな。そういう発見があってから、再びソロになってそのタガが外れてより自由な発想になったと。いい曲を作ってくれたら誰とでもやってみたいし、もちろん好みのものにするために僕もそこに参加しますけど、フラットにいろんなものを取り入れようとして。今まではK.A.Zくんとコラボしてきたところを、今は世界中のソングライターとコラボしているという感覚に変わっただけで、むしろいい人がいたら教えてっていう感じなんですよ。それがソロの強みだし。

ーその曲作りですが、ひとりのソングライターが書いたメロディをHYDEさんや複数のソングライターが手を加えていく方法なんでしょうか? それとも、いろんなソングライターの曲の断片をHYDEさんがまとめていくとか?

HYDE 前者ですね。だいたいワンコーラスは出来上がっている状態から、みんなで構築していきます。「MAD QUALIA」はShoくんが作ってきたオケに僕がメロディを付けました。

ーでは、大まかなアレンジというのもShoさんが?

HYDE  そうですね。あとは希望を伝えて彼がさらにブラッシュアップしていく感じでしたね。

ーカップリングにL’Arc~en~Cielの代表曲「HONEY」のセルフカバーが収録されています。昨年のツアーでも披露していましたが、ラルクの楽曲をソロとして音源に残すのは初めてですよね。なぜ今回レコーディングしようと思ったんですか?

HYDE 日本のフェスに出演するようになって、「HONEY」がいい起爆剤になることに気づいて。そこばかり取り上げられるのもどうかなとは思うんですけど、これを音源として出して楽曲を知ってもらうことによってさらにライブで盛り上がるだろうなと思ったんです。そういうアイデアから、じゃあやってみましょうと。だから、日本のフェスのために入れたようなものです。これをアメリカでやろうとは思ってないですね。

ーそういう理由があったと。シングルのカップリングにはこれまでも他アーティストのカバーやセルフカバーを収録してきましたよね。

HYDE アルバム本編とは違う、カップリングならではのちょっとした遊び心を出したくてね。

ーカバーする曲を選ぶときの基準ってありますか?

HYDE ある程度有名じゃないと意味がないかなとは思うんですけど、特にはないですよ。これもプロモーションの一環ですし。例えば「ZIPANG」に収録された「ORDINARY WORLD」(デュラン・デュランのカバー)の場合は、バラードをロックっぽく聴かせるやつを作ろうよって話から、じゃあバラードなら「ORDINARY WORLD」じゃない?ってところから挙がりましたしね。


Photo by Tim Gallo for Rolling Stone Japan

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