山崎が考える、ふたつの「ロックの基準」とは?─Perfumeは初出演の2008年から、6年連続出演となりましたよね。最後は大トリを飾りましたし。ほかにもたとえば2012年のきゃりーぱみゅぱみゅ、2014年のEvery Little Thingやゴールデンボンバー、2017年のももいろクローバーZ、欅坂46など、一般的にロックにカテゴライズされない人たちもたくさん呼んでいます。そうすることで、ロックの定義を捉え直そうという意識はありましたか?山崎:そもそも言葉としての「ロック」に、もはやそんなに意味はないんじゃないでしょうか。それは「ロックが衰退した」とか「ロックは死んだ」とかそういうことではなくて。うーん、なんて言えばいいんだろう……「ロック」という言葉そのものに関しては、実のところどうでもよくて。それは昔からそうだと思うんです。もともとが不純なものというか、ミックスされた音楽じゃないですか。
ゴールデンボンバー─わかります。ただ、先ほど挙げたようなアーティストを、単に「話題性があるから」というだけで節操なくオファーしているわけでは決してないですよね。ロッキング・オンなりの基準が確実にあると思うのですが。山崎:もちろん。我々の社名は「ロッキング・オン」だしフェスは「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」だし(笑)、ロックへの愛情とこだわりはものすごく強いものがあります。そしてロックというのは、ものすごく重要な概念だとも思っています。その概念の中にはいくつかの本質があるんですけど、まず「音楽として優れていること」。
当たり前のように聞こえるかもしれないですが、これはすごく重要な本質ですし、最も重視していることです。それともうひとつの本質は、「その人自身であること」。それを感じさせるものであるかどうかは、とても重要です。たとえばゴールデンボンバーのやっていることは、彼らにしかできないことですよね。ほかの人にできますか?(笑)
あるいは欅坂46。彼女たちは、自分で曲は書いていないですけど、本人たちそのものであることは、ステージを観れば一目瞭然です。そういうことを感じさせてくれるアーティストであるかどうかは、ひとつの基準ですね。そしてそれは、僕にとってのロックの基準と言ってもいいと思います。
欅坂46「ものすごく可能性があると思っています」。YouTuberの出演とメディアの変容─今年はグループYouTuberのFischer’sをブッキングしたことが物議を醸していますが、出演決定までの経緯についてお聞かせください。山崎:今まで出なかったアーティストに対し、ジャンルなどの縛りやこだわりなく出てもらいたいということの表れですよね。それについては、毎回様々な反響があります。その新しい試みがどうなるのか……正しかったのか、間違っていたのかは、当日を迎えてみないとわからないですね。
先ほどのPerfumeや欅坂46のケースと同様、実際のパフォーマンスを観て初めてわかるものだと思うので。それまでは正直、ちゃんと受け入れられるのかどうか不安もありますよ。でも、僕が今どうこう言えることはないです。
─そういう、未知数のアーティストをも積極的に取り上げてきたからこそ、RIJFは常に更新しながら前進して来られたわけですよね。山崎:そう思います。
─ちなみにYouTuberという、新たな表現手段を駆使したクリエイターたちについて山崎さんはどんな見解をお持ちですか?山崎:ものすごく可能性があると思っています。新しい表現は、新しいメディアで表現するものなんですよ。だからYouTubeという、現在最もポピュラーなメディアの主人公が、絶対に出てきてしかるべきだと思う。YouTuberはまさに、そういう存在ではないかと。
─これまでのロック史を振り返ってみても、メディアの変化により表現手段も変化し、そこから新たな才能が生まれてきているわけですから、YouTubeというメディアのポテンシャルに、ロッキング・オンが注目するのもごく自然な流れだと個人的には思っています。山崎:メディアというのは、時代とともにより開かれていくものだと思うんですよね。映画よりもテレビのほうが開かれているし、テレビよりもインターネットのほうが開かれている。そして今はスマホというデバイスをみんなが持ったことによって、インターネットの特性と動画の特性をマックスで活かしているYouTubeが登場して。それが主役となるのは当然の流れじゃないでしょうか。