「偽アーティスト」ストリーミング、年間320億円相当の被害の可能性

Olly Curtis/Future Publishing/Getty Images


二つ目はより手が込んでいて、ポーゼン氏のいう「コンピューター化されたクリックファームやボット」を使って効率的にストリーミングサービスをだます方法だ。ボットは、リアルユーザーによるものではない可能性のあるストリーミングを生む。だが、昨今のテクノロジーはあまりに進化した結果、「ユーザーが音楽をストリーミングしていないときに正規アカウントにハッキングしてストリーミングができる」人々が存在する、とポーゼン氏は確信している。よって、あたかも本物のストリーミングのようにみせるのだ。

「技術はますます手の込んだものになっています」とメディアおよび戦略コンサルタント会社、Salt + Vinegarの共同創業者のひとりであるアミール・カシャーニ氏はローリングストーン誌に語った。「好きな再生元を選んだり、テリトリーを買ったりもできます。ブラジルやアルゼンチンを再生元に設定することも可能です。」

三つ目は、なりすまし犯罪のストリーミング版のような操作だ。たとえば、3月に誰かがリアーナの楽曲とデモテープを大量にリークし、『エンジェル』というタイトルのアルバムにまとめてiTunesやApple Musicにアップロードしたとしよう。この場合、リークされた音源、または有名アーティストを自称する楽曲(実際は違う)がストリーミングに採用される。偽アルバムの収入はリアーナではなく、“フェンティ・ファンタジア”というユーザー名の有名人が確立した人気に便乗しようとする誰かにわたってしまう。

これらの操作の結果はすべて同じである。偽ストリーミングは、ストリーミング回数を伸ばそうとして金を払っていない他のアーティストの貴重な意識まで乱してしまうのだ。「共有プール型の利用者は、正規ストリーミングを行なっている人から盗んでいるのも同然です。」とポーゼン氏は述べた。「自分が評価されているのではなく、誰かを傷つけているのです。」

ストリーミング操作の顕著な上昇は、他のテクノロジープラットフォームに対する裏切り行為と同時に行われる。ストリーミングの場合、「私たちは保護措置よりも速いスピードで成長するテクノロジーを相手にしています。FacebookなどのSNSプラットフォームと同じ状況なのです」とポーゼン氏は指摘した。「ストリーミングサービスは大きくなり過ぎたあまり、ストリーミングプラットフォームを悪用させないための手段を持っていないのです。」

ローリングストーン誌はSpotify、Apple Music、TIDALなどのストリーミングサービス会社の代表者数名にコメントを求めたが、返事は得られなかった。

「市場とパフォーマンス次第で稼げるチャンスがあれば、必ず逸脱行為や操作は発生します。」

さらにいうと、極めて激しい競争がつきまとう音楽ビジネスの性質のせいで、アーティストはデジタル版ステロイド剤に手を出すことで、クズではなくヒットを、あるいは、何も考えずに送る9時〜17時の生活ではなくレコード会社との契約を実現できると信じてしまうのだ。「市場とパフォーマンス次第で稼げるチャンスがあれば、必ず逸脱行為や操作は発生します」とカシャーニ氏は語った。「システムをおちょくることは、やや普遍的なのです。」

Translated by Shoko Natori

タグ:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE