RCサクセションの音楽性から読み取るローリング・ストーンズの影響

没後10年が経つも今だに多くのアーティストに影響を与える忌野清志郎(Ⓒ阿部高之)

今年4月2日に発売された書籍『I LIKE YOU 忌野清志郎』(河出書房新社)。没後10年が経ち、忌野清志郎の音楽を知らない世代にもその魅力を伝えるべく刊行されたもので、様々な形で清志郎の作品、ライブに携わった人物が、それぞれの視点で時代ごとの清志郎の活動について証言している。多くの人々に影響を与えた清志郎だが、清志郎本人も様々なミュージシャン、クリエイターに影響を受けているはず。とくに、エレキバンド化してからのRCサクセションにはザ・ローリング・ストーンズからの影響を色濃く感じることができる。そこで今回、書籍にも語り手の1人として登場している高橋Rock Me Babyと書籍の編者・フリーライターの岡本貴之により「忌野清志郎とローリングストーンズ」をテーマに対談を行った。3回に亘ってお届けする対談の第1回は、RCサクセションの曲、ライブからローリング・ストーンズの影響を読み取ってみた。 



岡本:「Exhibitionism-ザ・ローリング・ストーンズ展」はご覧になりましたよね。いかがでしたか?

高橋:もちろん行きました。ストーンズの楽曲を自由にミックスできるところが面白かったです。この曲のチャーリーのドラムはどうなっているんだろう? とか、音楽に携わっている人ならみんなすごく興味があるんじゃないかと思いました。それに、ストーンズって独特のギターサウンドがありますし、ギターだけ聴いてみたいとかあると思うんですよ。近藤さん(書籍にも登場している近藤雅信氏・岡村靖幸所属事務所〈V4 Inc.〉代表)は、ロン・ウッドが好きなので、ロニーとチャーリーとビル・ワイマンだけのミックスをしたそうで、その様子を写真に撮ってSNSにアップしてました。

岡本:あれは楽しいコーナーですよね。

高橋:内覧会のときに行ったら、キースのレスポールTVモデルを観ている派手なファッションをした人がいて。よく見たら志磨遼平(ドレスコーズ)さんでした。真剣に観てましたよ。彼もストーンズが大好きなのだと思います。

岡本:志磨さんは今何歳ぐらいでしたっけ?

高橋:30代半ばぐらいだと思います。ちょうど『Love You Live』(1977年リリースのライブアルバム)の頃のミックやキースと同じぐらいの年齢ですね。 



岡本:清志郎さんの年齢で言うと、ちょうど高橋さんが関わりだした頃ですかね?

高橋:いや、僕が仕事をするようになったのは、清志郎さんが30代後半の頃でした。

岡本:その頃はストーンズは動いていない時期ですよね。

高橋:『Dirty Work』と『Steel Wheels』の間ぐらいです。ミックは『She’s The Boss』『Primitive Cool』と、既に2枚のソロアルバムを出してました。僕が清志郎さんと初めて会ったのはミックがソロで初来日した後ぐらいです。

岡本:ドラムにサイモン・フィリップス、ギターにジョー・サトリアーニというバンドで東京ドームでライブをやったときですね。

高橋:ミックの1stソロアルバム『She’s The Boss』は、まわりのストーンズ好きで色々批判的なことを言う人もいましたけど、僕は好きでした。ビル・ラズウェルとナイル・ロジャースがプロデュースをしていて。ジェフ・ベックも参加していますし、ストーンズでやらなかった「Lonely at the Top」という曲を1曲目にしていたり、ザ・フーのピート・タウンゼントやフリーのキーボードをやっていたラビット(ジョン・“ラビット”・バンドリック)が参加していたり、とても良かったです。2枚目の『Primitive Cool』もその流れでストーンズとは違うコンテンポラリーなサウンドを体現していました。2枚目では「Throwaway」が好きです。

岡本:「Throwaway」なんかはすごく頻繁に耳にした覚えがあります。ストーンズが動いていない分、精力的にソロ活動をしていましたよね。清志郎さんの話に戻しますけど、ロックバンド編成になってからのRCサクセションって、意識的にストーンズのイメージを真似てましたよね。でも80年代後半になるとRC自体が大物バンドになってきてそういうイメージもなくなってきたんじゃないですか。

高橋:1979年にチャボさんが加入して、はじめてローリング・ストーンズをモデルにしたと思います。曲やアレンジ、ライブもモチーフにしています。80年代後半は、それを消化して自分たちの音楽として、RCサクセションを確立。日本のロックバンドではじめて日本の音楽のリスナーと洋楽リスナーの両方が支持する存在になりました。

岡本:曲のモチーフというと、例えば?

高橋:「雨あがりの夜空に」のイントロのキース的なsus4のギターリフが代表的なモチーフです。メジャーなバンドでキース的なsus4をやったのは、チャボさんがはじめてだと思います。「ブン・ブン・ブン」もそうですね。「エンジェル」は「Angie」で。1985年に西武球場でやった「ステップ!」は、後半で「フッフー」って「悪魔を憐れむ歌」のコーラスを入れていたり。あと、「たとえばこんなラヴ・ソング」は「Tumbling Dice」から持ってきたって、森川(欣信)さんがおっしゃってました。全然「Tumbling Dice」には聴こえないですけど、そう言われてみればそうかなって(笑)。

岡本:僕は1994年の清志郎さんとチャボさんのライブ「GLAD ALL OVER」のときに野音の外でリハーサルを聴いていたら、清志郎さんがアコースティックアレンジの「たとえばこんなラヴ・ソング」をサム・クックの「Wonderful World」の歌詞で歌っているのを聴いたことがあります。だからメロディはそういうところからきていたのかなって。

高橋:ああ、なるほど。森川さんがおっしゃっているのは、バンドアレンジとしては、「Tumbling Dice」をモチーフにしたということだと思います。他にも、「トラブル」は『Tattoo You』の「Slave」で、チャボさんが歌っている「ノイローゼ・ダンシング(CHABOは不眠症)」とかも明らかにストーンズをフォーマットにしている。そういうのはすごく多かったと思います。80年代後半になってきて、だんだんストーンズをわかりやすく踏襲しているものは少なくなってきました。

Rolling Stone Japan 編集部

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