ドミニカ共和国の連続不審死事件、死因の謎を解く鍵は「密造酒」か

・偽造アルコールとは? なぜ危険なのか?

偽造アルコールとはいわゆる密造酒のこと。法規制にのっとって製造されたアルコール以外のものを指す。「費用をかけずに安く作られたものが多く、許認可も受けていませんが、見た目も匂いも酒造メーカーの既製品とほとんど変わらないものもあります」と、全米ワイン&スピリット卸売業者教会(WSWA)の宣伝マーケティング部の次長、マイケル・ビレロ氏はローリングストーン誌に語った。責任ある飲酒国際連盟(IARD)は、偽造アルコールを「商標つきで販売されている合法酒類商品を不正に模造したもの」と提議し、他の密造酒とは区別している。

時に偽造アルコールは原料や添加物として、死体防腐保存液や蓄電池用の硫酸希釈液、またはワイパー液や凍結防止剤などに使われる化合物メタノールなどが使われる。ごく微量のメタノールは死に至ることはないものの、人体に害を及ぼすことがあるとバレロ氏は言う。「めまい、吐き気、嘔吐、下痢、失明などさまざまな症例を引き起こす可能性があります。場合によっては死に至る場合もあります」。これらの症状は、グラス1杯飲んだだけであらわれることもあるという。

・偽造アルコールが販売されているのはどこか?

イランからインドネシア、メキシコにいたるまで、有毒な密造酒による死亡事件は世界のあらゆる場所で報告されている。今年の初めには、インドのアッサム州でメチルアルコール中毒により少なくとも150名が死亡したが、当局ではメタノールを含む「自家製」密造酒の販売が原因とみている。決して皆無ではないものの、アメリカ合衆国では偽造アルコールによる死亡事件はほとんどない。その主な理由は、他の国々に比べるとアルコールの販売および流通システムに対する規制が厳しいからだ。

ドミニカ共和国に限って言えば、「偽造アルコールを監視する行政機関はないと思います」とバレロ氏は言う。だが2018年のIARD報告書によれば、同国のアルコール総売上のうち29%近くが違法アルコールを占めている。もっとも、この数字は無許可製造のアルコールの売上数を示したもので、偽造アルコールに特化しているわけではない。

・偽造アルコールとドミニカ共和国の死亡事件の関連性を示す証拠は?

現時点でいうと、いまのところゼロ。あくまでも仮説にすぎず、ドミニカ共和国当局およびリゾートの所有者も、最近の観光客の連続不審死事件は単なる偶然にすぎないという見方を崩していない。バイーア プリンシペはソーシャルメディアで声明を発表し、島が安全であると観光客に安心させ、観光客の死に関する数々のメディア報道の信憑性を疑問視した。加工客の死に関係したホテルチェーンのひとつ、ハードロックホテル&カジノ プンタカナも、ローリングストーン誌が受け取った声明文によると、現在すべての客室からミニバーを撤去する作業に入っていること、またアメリカに拠点を置く独立検査機関に「飲食物および公共スペースの査察と検査を依頼している」と宿泊客に呼びかけている。

だが、ニューヨーク州のジョン・ジェイ刑事司法大学で法科学を教えるローレンス・コビリンスキー教授は、Cut誌とのインタビューで、一部公表された観光客の検視報告書を見る限り、肺水腫や心肺機能不全など、メタノール中毒の症状が一貫して見られると指摘した。

「心臓の鼓動が早くなって、血液が上昇すると、被害者はもっと酸素を肺にため込もうとして、呼吸が浅くなります」と教授はCut誌に語った。「神経学的な症状も見られます。毒物は心筋の収縮にも影響を及ぼし、心機能不全を起こします。そのために肺水腫を引き起こし、急呼吸不全になる場合があります」

Translated by Akiko Kato

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