現場スタッフから見たフジロック黎明期の衝撃

今やフジロックのお客さんは日本人に次いで、欧米の人よりもアジアの人が増えている

ーそういう意味でも初年度の天神山の失敗はのちのフジロックにとってポジティブな影響があったという。

小川 不思議だけどそうなんですよね。近年は逆にそういう自主的なマナーのよさが落ち着いてきたところもあって、日本語だけでフジロックのイズムを伝えているだけではダメなんだと思って英語のみならず韓国語や中国語でもアナウンスしなきゃいけないという流れになってるんですけど。今やフジロックのお客さんは日本人に次いで、欧米の人よりもアジアの人が増えているので。もちろん、そのことをネガティブな要素として捉えるつもりはないんですけど。

ー今、世界的な視野で見たら“ロック”という冠が付いてるフェスはマイノリティでもあると思うんですけど、フジロックは日本のフェスのオリジネーターとしてもロックフェスと名乗ることに大きなアイデンティティであると思うんですね。そのあたりについてはどう思いますか?

鯉沼 ロックという概念はより抽象的になってますよね。

高崎 だから、スタンスとしてのロックということだと思うんですよ。たとえば去年も今年もラインナップだったり出演者の音楽性としてのロックではないと思っていて。

鯉沼 そうだね。

小川 だからもはや精神的な意味でのロックだよね。

ーただ、去年のフジロックのヘッドライナーの初日がN.E.R.Dで、2日目がケンドリック・ラマーで、そして、3日目がボブ・ディランであったことにフジロックの挟持を感じるというか。

高崎 それをきれいにまとめて言うならそうだけど、実際にはそんな計算はなくて。偶然の産物でもあるんですね。言ってしまえば、ケンドリックも精神性的にはロックだなって思うし。

ー確かに。

高崎 彼の音楽性やパフォーマンスはポップなわけではないですよね。ものすごくエッジが立っているし。要はそこが軸なんですよね、フジロックって。それは打ち込みの音楽でもヒップホップでもロックバンドでもそこの軸に対しての独自の基準があるんだと思います。

ーその話を踏まえて、ケミカル・ブラザーズ、SIA、ザ・キュアーという今年のヘッドライナーについてはどうですか? 

小川 まず、SIAに関してはここ2年くらい追っかけてたんだよね。

高崎 そうですね。言ってみたら今年のラインナップってフジロックファンにとっては「またケミカルかよ」って言いながら絶対に観たら楽しいんですよ。確実に言えるのはフジロックのケミカルは最高なんです。これは間違いない。あの空間で観るケミカルは他のフェスやイベントとは別世界であるという意識は僕らもお客さんも共有していて。で、キュアーに関しては今年40周年ということがあって、それはフジロックとしても世界的にも特別なタイミングで。でも、このラインナップだけだと面白くないんですよ、ブッキング担当としては。そういうところで、去年ケンドリックという新しい時代感を見せたところでまた同じような色を見せちゃうと「またじゃん」ってなるとの新しいアイコンを見せないといけないと思っていて、他のブッキング担当と話して「SIAが面白いんじゃない?」ってなったんです。これが初来日になるし、フジロックにとっても新しい見せ方ができるんじゃないかと。

小川 あとはSIAと同じ日にはマーティン・ギャリックスもいるしね。

ーEDM系譜の流れというか。

高崎 そう、ここは新基軸だと思いますね。

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