アフロビートが21世紀にもたらした「変革」とは? シェウン・クティを軸に歴史を辿る

シェウン・クティ(Courtesy of ブルーノート東京)

シェウン・クティ&エジプト80の来日公演が7月21日〜23日にブルーノート東京で開催される。アフロビートの創始者フェラ・クティを父に持ち、その遺志を受け継ぐ鬼才の歩みを、『Jazz The New Chapter』シリーズで知られるジャズ評論家の柳樂光隆が解説する。

シェウン・クティ&エジプト80の来日公演がもうすぐ開催される。僕は昨年もブルーノート東京でライブを見ているが、父フェラのバンド=エジプト80を引き継いだだけあり、ベテランから若手までが揃ったバンドでアフロビートの真髄を聴かせてくれる。そして音楽だけでなく、ステージ上で歌いまくり、踊りまくり、力強くアジテートするシェウンのキャラクターも見ものだ。さらにダンサーたちも同行し、政治的なメッセージを込めたシリアスさと、華やかでエンターテインメントが同居したパフォーマンスは誰もが楽しめるものだろう。由緒正しき血統を受け継ぐ彼は、2010年代の重要ムーブメントとなったアフロビートの中心人物である。興奮必至のパフォーマンスを見逃す手はない。


昨年のブルーノート東京にて。(Photo by Tsuneo Koga)



2010年代はアフロビートにとっての新たな黄金期だと思う。アフリカ音楽の熱心なリスナーでなくても、ただ日常的に音楽を聴いているだけで、フェラが育んだアフロビートの遺伝子を独自発展させた音楽に多く出会ってきたはずだ。そこには当然、ceroの『Obscure Ride』だって含まれるし、つい最近もロバート・グラスパーが起用されたフィリップ・ベイリー(アース・ウィンド・アンド・ファイアー)の最新ソロ作『Love Will Find a Way』で、冒頭からカーティス・メイフィールドの名曲「ビリー・ジャック」のアフロビート・カバーが披露されていた。

フェラの息子であるシェウン・クティと、彼にとって腹違いの兄であるフェミ・クティの歩みは、そういったアフロビートの受容・発展史とも接続できるはずだ。両者の偉大さを確かめるうえでも、まずは21世紀にアフロビートが興隆した経緯から説明してみたい。



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