LiSAが「紅蓮華」で示した使命とロックシンガーとしての矜持

LiSAという人は少年性を歌えるような声質だと思う

―サウンドの話もお聞きしたいんですけど、「紅蓮華」は構成が凝ってますよね。2番からガラッと違うメロディが入ってきたり、Cメロで印象的なシーケンスが入ってきて、最後の大サビになだれ込んでいくという。パッと聴きでもキャッチーですけど、よく聴くとかなり凝っている。これはどうやってつくられたんでしょうか。

これまでの作曲方法とは違って、まずディレクターと一緒に曲の大枠を作りました。ここはこういうコードで、こういうふうに進んでっていうのを図面に起こして、それを作曲家に渡してメロディを付けてもらいました。自分たちがやりたいことを言葉で説明するよりも音にしたほうが早いと思ったんです。だから、最初からイントロはBメロでしたし、2番でラップっぽくするっていうのも最初から決まってました。そうやって音の発注書をつくったんです。

―そういうつくり方をしたのはなぜですか?

「鬼滅の刃」ってみんなで一緒にゴールを目指そうっていう作品なんですね。しかもジャンプの作品ですし、ジャンプには<努力・友情・勝利>という原則があるので、「疾走感のある明るい曲を作ってください」って言われて、5曲ぐらいつくってたんです。だけど、アニメの制作が進んでいくにつれて、「やっぱり、戦闘シーンを描きたいから、メジャーコードの曲ではないです」っていう話になって。

―おお~、それは痺れますね。

それで、「これは先に枠を作って渡したほうがわかりやすいだろう」っていう話になって、北海道でライブハウスツアーのファイナルを終えた次の日にディレクターとスタジオに籠もって、曲を作って、次の日に作曲家に投げて、1コーラス作ってもらって、それから歌詞を速攻で書いて、仮歌を歌って提出しました。とにかく時間がなかったです。

―時間がなかったとは思えないぐらい練られてますよ。

それは、その前に5曲作っていて、仮歌詞も書いて、仮歌も録って、アレンジまで進めていたので、自分たちのなかでやりたいことが固まっていた状態だったんです。だから、それを違うバージョンに落とし込むだけだったし、意見がまとまるまで早かった。ただ、めちゃくちゃ大変でした。あはは!

―それはそうですよねえ(笑)。じゃあ、途中までつくっていた壺を全部割ったわけではないんですね。

一回割ったんですけど、カケラを集めて新しいものに練り込んだって感じです(笑)。でも、その前の曲はそれぞれ違う人に書いてもらっていたので。あくまでも方向性のエッセンスを入れたって感じですね。 

―すごい世界だ……。そういうことってよくあるんですか?

あまりないです。だけど、さっきも言ったように、ひとつのゴールに向けてみんなが進んでいくっていう作品のテーマを考えると、「なんでこの人がオープニングなの?」みたいなものには絶対にならない。私がこの作品に選ばれた一番の理由は柔軟性なんだと思います。自分自身、「どうしてもこれじゃないと嫌だ」というタイプではないし、私の作品への寄り添い方が理由だったんだと思います。

―適度な距離感で楽曲をつくってくれるアーティストだという認識が製作者側にあったと。

そうだと思います。それでいて、外へ向けての音楽も作れるっていう。たぶん、役割的にちょうどよかったんだと思う。「鬼滅の刃」という作品に、プロデューサーが思い描いてる作品づくりに合ってたんだと思います。

―LiSAさんは、アニメの製作者から楽曲の発注を受けて、そこから作品を吟味するという形なんですか?

そうですね。

―でも、アニメの初回放送を観て主題歌がLiSAさんってわかると、「このアニメはきっと面白いんだろうな」って思いますよ。

あはは! それはこれまできちんと作品に向き合ってきたからだし、そういうふうに思ってくれる人がいっぱいいたらいいなと思います。

―じゃあ、LiSAさんが主題歌を担当しているアニメを観れば間違いないってことですね。

「鬼滅」はちゃんとみんなの血が通っている作品だし、「この作品を大切にしなきゃいけない」としっかり感じながら責任を持って仕事をしている人たちがちゃんといるんです。

―昨年、ベストアルバムを2枚リリースしてひと区切りついたところもあると思うんですけど、今後新しくやりたいことはありますか?

今年で活動9年目なんですけど、これまでってどちらかというと不安のほうが大きくて、自分がすり減るまでやらないと本当の意味での“好き”が伝わらない、そうじゃないとみんなが遊んでくれなくなったときにきっと後悔するって思ってて。まさに「紅蓮華」のように、自分を傷つけてボロボロの血だらけになって「好きなんです……! 遊んでほしいんです……!」って言ってる感じだったんですけど、ベストアルバムを経て横浜アリーナにも立てたことで、みんなのことを信じられるようになったというか。今さらかよって感じですけど。これまでは「短く速く生きればいいや」と思ってて。散るならさっさと散る、みたいな。

―27歳で死ぬ、みたいなことですよね。

そうそうそう。偉大なミュージシャンは早く死ぬ、みたいな。そうやって誰かの記憶に残るっていう儚さに憧れていたときもあったんですけど、「紅蓮華」に書いたような使命を背負ったときに、「この人たちと長く遊んでいきたいな」っていう考え方に変わっていきました。今は、自分をすり減らすようなものではなくて、もっとみんなと楽しんでいける音楽作りができるようになったらいいなと思ってます。

―前回のインタビューで気になったのが、自分と同じぐらいの年齢の方に届いたらいいと思いながら曲をつくっていくという話で。それは新規の若いファンを開拓するのではなく、今いるお客さんを大事にしていきたいということなんですか?

欲を言えばどちらもです。自分を客観視すると、LiSAという人はどちらかと言うと少年性を歌えるような声質なんじゃないかと思っていて。だからこそ、歌詞がずっと大人っぽくならないんだと思います。「愛してる」っていう言葉を使うにしてもチャラけてしか言わない、みたいな(笑)。そういう意味では、これからも下の世代の人たちにも伝わりやすい音楽をやり続けるんだと思います。なので、若い人たちが希望を持てるような、「こんな大人になりたい」って思えるような人、音楽、遊び方になったらいいなと思ってます。だけど、音楽性としては、みんなと長く生きていきたいので、一緒に歳をとっていけるようなものにしたいなと思ってます。




<INFORMATION>

「紅蓮華」
LiSA
SACRA MUSIC
発売中

初回限定盤


通常盤


期間生産限定盤


LiSA「LiVE is Smile Always~紅蓮華~」
2019年7月6日(土)京都府・ロームシアター京都 メインホール
2019年7月13日(土)石川県・本多の森ホール
2019年7月15日(月・祝)新潟県・新潟県民会館
2019年7月19日(金)東京都・中野サンプラザホール
2019年7月27日(土)青森県・青森市文化会館 リンクステーションホール青森
2019年7月28日(日)宮城県・仙台サンプラザホール
2019年8月11日(日・祝)熊本県・市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
2019年8月12日(月・振休)福岡県・福岡サンパレス
2019年8月25日(日)埼玉県・大宮ソニックシティ 大ホール
2019年9月5日(木)大阪府・オリックス劇場
2019年9月6日(金)大阪府・オリックス劇場
2019年9月10日(火)愛知県・名古屋国際会議場センチュリーホール
2019年9月11日(水)愛知県・名古屋国際会議場センチュリーホール
2019年9月21日(土)東京都・オリンパスホール八王子
2019年9月27日(金)岡山県・岡山市民会館
2019年9月28日(土)広島県・広島文化学園HBGホール
2019年10月5日(土)愛媛県・松山市民会館
2019年10月15日(火)北海道・カナモトホール
https://www.lxixsxa.com/

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